酔った父に車内でゲロ吐かれる

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私は田舎に住む大学3年生の女です。

 

飲み会おわった。駅まで迎えおねがい

父からそんなメッセージが届いたのは、先週のことでした。お風呂をあがったばかりだった私はあわてて髪を乾かし、スマホと免許をかばんに突っこんで車を走らせました。

 

家の最寄駅までは、歩くと30分くらいかかります。酔っ払いにはきびしい道のりです(徒歩で帰ろうとした父は以前、あまりに酔っていたため、側溝に落ちて血だらけで帰宅したことがあります)。

駅に着くと、父はいつもどおりの場所に立っていました。私の車に気づいたようで、こちらに向かって歩いてきます。ドアを開けて車に乗りこみました。私はシフトレバーをDレンジに入れ、車を発進させます。

 

いやぁ~、飲み過ぎちゃったよ。窓開けていい?

私は頷きました。12月。寒くないといったら嘘になりますが、ゲロを吐かれるよりはマシです。フレッシュな空気で気分爽快になってもらわなければなりません。

ところが、「頭ガンガンする」の発言を最後に、父はとつぜん静かになりました。

しばらく進み、赤信号に引っかかりました。助手席に座る父の体が2、3回揺れたかとおもうと、次の瞬間、悲劇は起こったのです。

 

オェッ!! オェェーーーーーーー!! 

 

 

この惨劇から1週間が経とうとしていますが、ニオイがなくなる気配はありません。むしろ芳香剤やら消臭剤やらの香りと混ざりあって、パワーアップしたようにすら感じます。せっかく大事に乗ってきたのに……。愛車がこんなことになってしまい、ショックを隠せません。

今日も私は、二重にかさねたマスクを着けて運転しています。12月なのに、窓を全開にして。

 

<長野県・悪臭退散さん・19歳>

 

お父さんの不器用な愛情表現

愛車がゲロくさい。そういうことですね。ところでマインドフルネスをご存知でしょうか。「今ここ」で起きていることに注意を向ける。「今この瞬間」に集中する。そうすることで、ストレスが減り、幸福度が増すといわれています。

この意識を今ここに向けることをマインドフルネスと呼ぶのです。

裏をかえせば、普段の私たちは「今ここ」をないがしろにしている。

テーマパークの待ち列で仕事のことを考えたり、ジョギングをしながらクレジットカードの利用額を計算したり、カレーを食べながらウンチに思いを馳せたり。まさに心ココニアラズ。マインドフルネスの真逆です。

私たちがもっと幸せに生きるためには、「今ここ」に集中すべきなのです。

 

さて、話を戻しましょう。あなたは父親に車内でゲロを吐かれた。これは、マインドフルネスへの第一歩といえます。

なぜなら、嫌でも今ここに集中せざるをえないから。

車内がクサくてクサくて堪らないとのことですので、意識は完全に「今ここ」に向いています。釘付けです。

悪臭がたちこめる車内で夕飯の献立を考えられるはずがありません。

 

衝撃の事実をお伝えしますと、ゲロをぶちまけられた瞬間に、あなたの車は車ではなくなりました。ではいったいなんなのか。車ではなくてなんなのか。

 

半強制移動式マインドフルネスマシーン(インド人もびっくり)です。気を抜くと過去や未来に飛んで行ってしまう意識を、グッとここにとどめておく。あなたの元愛車は、その手助けをしてくれる装置と化しました。

 

これからはもう、運転しながら、お腹にたくわえた贅肉のことを考えたり、髪の毛をぜんぶ引っこ抜いてやりたいほど憎んでいる上司を思い浮かべることはないでしょう。なぜならあなたの意識は、ギンギンに「今ここ」に向いているから(※悪臭のおかげで)。これが半強制移動式マインドフルネスマシーンのパワーです。

 

あなたは今後、まちがいなく満ち足りた毎日を過ごせるようになることでしょう。

ゲロ臭漂う車に乗れば乗るほど幸せになれるだなんて、なんだか不思議な話ですね。

 

ただひとつだけ注意があります。

あなたの車はもはや車ではなく半強制移動式マインドフルネスマシーンになりましたが、車検は必要です。

どんなに「これは車じゃない!半強制移動式マインドフルネスマシーンだいっ!」と言い張ったところで、たぶん聞き入れてもらえません。あしからず。