書評ライター・三宅香帆著『バズる文章教室』を読みました。
"文芸オタクの私"こと三宅氏がネットでバズる文章について教えてくれるという、なんともありがたい内容です。
個人的にはイマイチでしたが。
『バズる文章教室』の感想
森鴎外、村上春樹、綿矢りさなど著名な作家の小説やエッセイを引用し、「ここがすごいんだよ!」と解説しています。
たしかに作家のみなさんの文章は素晴らしいのですが、自称"文芸オタク"である三宅氏の熱量がまぁ、あつくるしい。
夏に読んだら脱水を起こすんじゃないか、というくらいあつくるしく、一人で勝手に盛り上がっています。
本書は冬に読むのがおすすめですね。
面白い人間だと思われたい?
著者の文章はどうも口に合わないというか、目に合いませんでした。
「私ってこんなにユーモラスな面白い人間なのよ。ほら、見てよこの文体、親しみやすいでしょう?」感がすごいのです。
「きょ、興ざめだと思いません!?」
という著者の文章に興ざめしました。
文章術を説く本の文章が好きになれないというのは、致命的です。
人によってはこれが"抱腹絶倒の文章"なのかもしれませんが。
料理教室の先生が作る料理がすごく不味い、みたいなことですからね。
もしくはスキー教室の先生が転びまくる、みたいな。
改悪の文章はいらない
村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を引用し、文章はリズム感が大事だと解説していました。
文章にリズム感が必要なのは、その通りだと思います。
が、著者はわざわざ引用した文章をオリジナルで改悪するんですよね。
村上春樹の場合だと、リズム感のない文章に著者が改悪して「読みにくいでしょう?」って。
読みにくい文章をわざわざ読ませないで欲しい、と思いました。これ読んだら10円くれ、とも思いました。
改悪をよほど気に入ったのかページ数を稼ぎたいのか、引用するあらゆる名文を改悪しては、読者に読むよう強要してきます。
「なんで下手バーションを読まなあかんねん!だったら10円くれや!」ってな話です。まったく。
まるで「部屋に出たゴキブリの写真見てよ!」といわれているような気分になりました。
「なんで見なあかんねん!」っていう。
これでバスる文章を書けるか
『バズる文章教室』を読んでも、おそらくバズる文章を書けるようにはなれません。
ただ、著者のような文章が「バズる文章」なのだとしたら、私はバズらなくていいや、と思いました。
「きょ、興ざめだと思いません!?」
なんて、か、書きたくないでしょう!?
『バズる文章教室』のメリット
この本を読むメリットがあるとすれば、あらゆる作家の名文を読める点にあります。
集約するつもりはありませんが、その一点に集約されます。
上野千鶴子、橋本治、林真理子らの洗練された文章をいろいろ読めるので、幕の内弁当を食べているようなお得な気分になれます。
素晴らしい文章を書く作家と出会うきっかけに本書がなるかもしれません。
まとめ
『バズる文章教室』で面白かったのは、AKB48の楽曲『ポニーテールとシュシュ』の解説です。
「秋元康の作詞能力すごい!」と素直に感動しました。
あとはまぁ、それほど面白くはありませんでしたね。
「書き手に大事なのは読者を楽しませる視点だ!」と力説する著者が、だれよりも楽しそうでした。
まぁ、本人が楽しめたならいいです。
以上、『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の感想でした。
一応リンクを貼っておきますね。
買う人がいたら、きょ、驚愕ですが!?