本書のタイトルには「幸福に死ぬ」とありますが、これはつまり「幸福に生きる」ということでもあります。
けっして「幸福な死に方」を説いているわけではありません(老衰がいいとか癌がいいとかではない)。
この記事では『幸福に死ぬための哲学 池田晶子の言葉』を読んだ感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『幸福に死ぬための哲学 池田晶子の言葉』の感想
本書には、池田晶子氏の著書から抜粋した「テーマに合う文章」が掲載されています。
たとえば老化について、池田氏のあの著書ではこう触れていて、この著書ではこうやって……というように。
ですので、本書を読めば著者の考えを体系的に知ることができます。
本当のプライドとはなにか
「自分に恥じない生き方をせよ」と著者はいいます。
自分の人生は、自分の生きたいように生きればいい、と。
他人にどう見られるかばかりを気にしていては、本当の意味で幸せになることはできません。
『嫌われる勇気』の言葉を借りれば、「他者の人生を生きている」ことになってしまいます。
つまり「自分の人生を生きていない」わけですね。
自分にたいして恥ずかしいと感じるのが本当の恥であって、自分に恥じないことこそが本当のプライドなのだと。
オラはオラの人生を生きるゾ
他人の目なんて気にしている場合ではありませんね。
私はこの文章に触れて、よりいっそう『クレヨンしんちゃん』のDVDを堂々と借りる自信が持てました。
大人が『クレヨンしんちゃん』を借りることよりも、恥じて『クレヨンしんちゃん』を借りないことこそが、自身のプライドを損ねる行為なのです。
もしコーナーに小さい子どもがいても「ちょっとゴメンね」とどかして、借りようと思います。
生きたいように、生きるために。
老化について
著者は「年をとること」についても言及しています。
一般的に老化は嫌なことであり、良くないことであり、避けるべき対象です。
だからみんなアンチエイジングに必死。
しかし池田氏は「年をとることを反価値とするのは、肉体にしか価値を置いていないから」と指摘します。
中身に目を向ける
これにはハッとさせられました。
たしかに肉体は加齢とともに衰えていきますが、精神はむしろ成熟していきますよね。
経験を積み、知識も増え、あらゆる思考ができるようになる。
そう考えたら、年をとることも、案外悪くないのかもしれません。
著者は「年ばかりとって中身はカラッポ。こういう年寄りこそ醜い。今のうちから中身の側へ価値を転換しておこう」と呼びかけます。
どう抗っても失われてしまう肌のハリや艶に執着するよりも、中身に時間とお金をかけたほうがいいというのは、個人的にもそう思います。
肌が艶々のおばあちゃんになったところで、内面が寂しれば、ずいぶん退屈な老後生活ではないでしょうか。
初めての経験を楽しめ
さらに著者は「老いるのは誰しも初めての経験であるから、未知の経験を味わうことなく拒否するのは、せっかくの人生、もったいない」とまでいいます。
とんでもないポジティブ思考ですね。
やられました。
視力が衰える、肩が上がらない。
老化によるこうした現象を「初めての経験」だと捉えれば、たしかに、「味わってやろう」という気になれるのかもしれません。
人生で初めて登山をしたり、初めてポルシェ911を運転したりするのとおなじように。
私は現在20代ですが、将来的には「うおぉ!肩が痛くて腕が上がらんようになったぞ!見てくれ!ホレ!ワッハッハ」ってな爺さんになることを誓います。
で、若い店員をつかまえて「あの上にある『クレヨンしんちゃん』のDVDを取ってくれんかのう?肩が上がらんもんでな」と、プライドを持って生きます。
まとめ
池田晶子氏の本を読んだことのない方にとって、本書は「入門書」としておすすめです。
ぜひ彼女の哲学を覗いてみて、興味を持ったら、引用先の著書にあたってみてください。
前後の文脈を含めて彼女の思想に触れることができ、よりいっそう深く理解できることと思います。
これからの人生や老後について不安を持っている方は、ぜひ本書を読んでみてはいかがでしょう。
人生や老後について静かに考える時間を持つのも悪くありません。
少なくとも、ほうれい線やおでこのシワについて悩むよりは。
以上、『幸福に死ぬための哲学 池田晶子の言葉』を読んだ感想でした。