あなたがもし銃を拾ったら……?
この記事では中村文則著『銃』の感想を書いていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
なお、ネタバレはいっさいありません。
『銃』の感想
中村文則のデビュー作である『銃』を読みました。
銃を拾った大学生の物語です。
私ならすぐ交番へ届けますが、主人公はそれを持ち帰り、自宅でこっそり保管することに。
彼が銃を眺めて何度も思う「美しい」という感情が印象的でした。
生き物を殺すための道具に宿る美しさは、風景や絵画がもつそれとはちがうはずです。
銃について考えたことも実物を見たこともありませんが、映画などに出てくる拳銃を思い出してみると、たしかに美しいようにも感じます。
無機質で冷たい感じというか。
撃つのか撃たないのか
本書の最初から最後まで緊張感があるのは、主人公が悪いこと(銃の所持)をしているのもそうですが、「銃を撃つのかどうか」が気になってしまうことも関係しています。
主人公が誰かに腹を立てたりすると「コイツを撃ったりしないよな?」とヒヤヒヤするのです。
もちろん、どうなるのかは書きませんが、とにかく楽しめる作品です。
もしも銃があったら
日本人にとって銃は遠い存在ですが、アメリカでは一般家庭にもふつうに銃があります。
たいていは護身用だというものの、その気になれば他人の命を奪うことも、自らの命を絶つことも容易にできてしまいます。
銃のような恐ろしい道具が身近にあったらどうなるのだろう。
本作を読みながら、そんなことを考えました。
運転中のトラブル
車を運転していて他者とトラブルが起こっても、日本では相手に罵倒されたり、殴られたりする程度で済みます(それもじゅうぶん嫌ですが)。
が、アメリカでは激怒したドライバーが相手を射殺してしまう事件が起こっています。
もし怒り狂った日本人の手元に銃があったら、その人物はおなじことをしてしまうのではないか。そう考えると恐ろしくなります。
日本では銃が規制されていて良かったと思いますし、今後も変えるべきではないと思います。
銃を拾った主人公が徐々に変わっていく様を目の当たりにすると、そう思わずにはいられません。
物語の結末について
『銃』の結末は読者によって賛否あるようですが、個人的にはかなり気に入っています。秀逸です。
「こうであって欲しい」と願った通りのラストでした。
もしも本書を読んだことのない方は、他人のレビューなどを見ず、すぐに読み始めることをおすすめします。
レビューのタイトルだけでも「ネタバレ」してしまうケースがありますので、注意が必要です。
私はラストシーンを読んで、やられた!と思いました。
まとめ
『銃』は、まさに中村文則の原点ともいえる作品でした。
文体や表現なども彼らしく、本書を読めば中村文則がどういう作家なのかがわかります。暗い雰囲気なのもすぐにわかります。
なかには彼の文体を「嫌い」だという人もいますね。
たしかにクセがあるので、最初はとっつきにくいかもしれません。
ですが、読んでいるうちに慣れますし、慣れてしまうとむしろどんどん好きになる不思議な魅力を持っています。
もし中村文則の作品を読んだことがない方は、まずは『銃』から読んでみることをおすすめします。
以上、中村文則著『銃』の感想でした。