この記事では、筒井康隆著『誰にもわかるハイデガー』を読んだ感想を書いていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
『誰にもわかるハイデガー』の感想
本書の内容は、ハイデガーの『存在と時間』について作家・筒井康隆氏が解説する、というものです。
ハイデガーは20世紀最大の思想家。
彼が残した『存在と時間』は20世紀最大の哲学書。
詰まるところ『存在と時間』は、とんでもなく頭のいい人が書いた、とんでもなく難解な本なわけです。
真っ向勝負を挑んでもまったく歯が立たないので、筒井先生による解説書を手にとってみました。
「誰にもわかる」という心強いタイトルですし。
口語文で読みやすい
本書は、1990年5月に筒井氏によって行われた講演をもとに作成されています。
そのため文章が口語体で書かれていて、とても読みやすい。
まるで講演会で話を聞いているかのように、スラスラと頭に入ってきます。
『存在と時間』は難解
ハイデガーの『存在と時間』は噂どおり難解でした。
本書のなかで『存在と時間』日本語訳の原文が紹介されているのですが、まぁ、まったく意味がわかりません。
ちんぷんかんぷんです。
筒井氏のわかりやすい説明のおかげでなんとか理解できますが、いきなり『存在と時間』にチャレンジしていたら、2ページ読んでブックオフに売り捌いていたことでしょう。
現存在とか実存とか
ハイデガーの『存在と時間』には専門用語がたくさん出てきます。
現存在、実存、本来性、非本来性……。
筒井氏が意味を解説してくれているので、その都度メモを取りながら読み進めていきました。
「えっと、現存在だから、これは、人間のことか」という具合です。
『存在と時間』はどんな内容?
『存在と時間』の内容をまとめると、「死」の不可避性を受け入れて覚悟することで人間は倫理的になる(良心を持つ)ことができる、ってな感じです。
死があるからこそ人は善く生きられる。
私はそう理解しました。
なぜそうなのか、は『誰にもわかるハイデガー』で丁寧に解説されているので、本記事では割愛します(といいつつ上手く説明できないだけ)。
専門家の解説付き
本書は筒井氏による解説にくわえて、巻末には専門家による補足説明が載っています。
これがまた、とてもわかりやすい。
『存在と時間』の理解をいっそう深めてくれます。
ハイデガーはひとりの専門家が一生かけて研究しても汲み尽くせないほど面倒で難解な哲学者なんだとか。
これを知って、「筒井康隆、天才かよ」と慄いたり。
あるいは『存在と時間』は未完、ハイデガーがつづきを書くのを断念したと知って、「自分でもわからなくなっちゃったのかよ」と嘆いたり。
最後まで楽しく読めました。
まとめ
難解な『存在と時間』と、ユーモアを交えてわかりやすく解説してくれるのが本書です。
入門書として最適だと感じました。
もしハイデガーの『存在と時間』が気になる方は、いきなり本家にアタックすると挫折するので、まずはこちらから入門することをおすすめします。
頭に負荷をかける読書
入門書といえど、本書を読むのも楽ではありません。脳に負荷がかかります。
私はこの負荷にたいして「こういう読書もいいなぁ」と嬉しく感じました。
わかりやすければ良いってもんじゃありませんね。
それはまるで流動食ばかり食べているようなもので、しだいに噛む力や消化器官が衰退してしまう。
だからときどき、こうした厄介な本に挑むことも必要なのだと思います。
なおタイトルには「誰にもわかる」とありますが、私の理解度は70%程度です。
タイトルに偽りがあるのか、私の理解力に難があるのか、ちょっとわかりませんが。
以上、筒井康隆著『誰にもわかるハイデガー』を読んだ感想でした。