この1冊にビジネス書1000冊分のエッセンスが詰まっているなら読むしかない。
そう思い、本書を手にとったのですが……。
この記事では、大岩俊之著『ビジネス本1000冊分の成功法則』を読んだ感想をご紹介します。
先に書いてしまうと、まれに見る酷さでした。
『ビジネス本1000冊分の成功法則』の感想
まずは本書の流れから。
テーマごとに「誰これがこういってます」と、どこかのビジネス書から文章を引用します。
で、「そうなんですよ」と肯定して、著者の体験談がつづく。
基本的にこんな構成です。これの繰りかえし。
驚くべきは、著者の体験談のショボさですね。
まるで取ってつけたような、主張の補強にすらなっていないような体験談を披露しています。
「成功するまで諦めるな」という主張の後に、「そういえば俺もそんなことあったな」レベルの著者のお話、みたいな。
どれも著者が自ら見つけ出した成功法則ではありません。たくさんのビジネス書を読んで学んだそう。
ゆえに薄っぺらく感じてしまいます。
たとえば、「人の名前を呼びましょう」と書いています。
が、おそらく著者は名前を呼ぶメリットを理解していません。
その証拠に、「人の名前を呼ぶという行為は非常に重要なことだからです」と説明していました。
これは循環論法ですね。
人の名前を呼ぼう。なぜなら、名前を呼ぶのは大事だからだ。
……たぶん、人は自分の名前を発音されるのがもっとも「気持ちよく感じる」からです。
エクスクラメーションマークの多用
「!」これですね。
日本語では感嘆符と呼ぶこれを、著者は多用しています。
ネガティブなトーンから、急に「〜しましょう!」とか。
話の着地点が見えなくなったときに、勢いだけで強引に締めようとしている感じがしました。
論理的に文章を展開するのではなく、「おりゃぁ!」と力技で終わらせる。
驚異のパワープレイを堪能できます!
グリーン車に乗る理由にツッコむ
著者が新幹線でグリーン車に乗る理由がとてもユニークでした。
まず、ビジネス書で書かれていたからグリーン車に実際に乗ってみた。
で、気に入った。
だから以降は、空間を買うためにグリーン車に乗っているのだそう。
普通車だと隣の人と肩があたってしまうけど、グリーン車は広いから平気。
静かだから考え事ができる。読書も可。
空間が広いためか(著者もよくわからないけれど)疲れないから、移動後も頑張れちゃう。
お金があるからグリーン車に乗るのではない。
時間と空間を買うためにグリーン車に乗るのだ、と。
で、この話を著者が友人にしても、利点をなかなかわかってもらえないのだと嘆いていました。
友人の反応はまちがっていません。
普通車にくらべ、グリーン車の価格は倍近くします。
にも関わらず、グリーン車のメリットが弱いのです。
「グリーン車なら肩があたらない」って……。 元ラガーマン?
グリーン車は静か?
さらに著者は、普通車は仕事をしている人ばかりでキーボードを叩く音がうるさいと指摘しています。
いっぽうでグリーン車はどうか。
「仕事をしている人もいるけど、ゆっくりしている人もたくさんいる」。
仕事をしている人、グリーン車にもいるんですね。
その事実を打ち消すかのように「ゆっくりしている人もたくさんいる」と述べていますが、それは普通車もおなじです。
あとは、お金持ちだからグリーン車に乗っていると思っていたが、実際に乗ってみて、お金のあるなしは関係ないと思った。グリーン車を使うのはものすごく価値のあることだから、と書いています。
でも、 「グリーン車に乗っている人は成功している人である可能性が高い。だから自分も頑張ろうと思える」とメリットを挙げていました。
矛盾しています。
グリーン車に乗るのはお金があるからではない。でも、グリーン車には成功者が多い。
よくわかりません。
そして、成功者というのが何を指すのかよくわかりませんが、そんな空間に身を置くとモチベーションが上がるのだとか。おめでたいことです。
まとめ
非常に残念なことですが、本書はビジネス書1000冊分はおろか、1冊分にも達していません。
なにか適当なビジネス書を1冊読んだほうが、きっとためになります。
他者の意見を取りあげて「そうなんだよ」と賛同し、ダメだった著者、成功法則に出会った著者、成功した著者というあまりにワンパターンな体験談を披露し、最後には「〜しましょう!」というビックリマークで締めくくる。
「成功するには成功者のマネをするのがいいといわれています」とのことで、本書の根底すら他人任せ。
どこにも著者の考えが見当たりません。
なお、著者は出張先でかならずちょっと広いホテルに泊まるそうです。
隣の音は聞こえないし、寝室と仕事部屋がわかれているから仕事に集中できるし、風呂が広い。
これはお金には代えられない、と。
お金を出して広い部屋を予約したのだと思いますが、お金には代えられないといいます。
なんとも難解です。
それから読点の多用が気になりました。
著者は年間300冊の本を読むそうですが、どれも読点が多い文章なのでしょうか?
以上、大岩俊之著『ビジネス本1000冊分の成功法則』を読んだ感想でした。
クリティカルシンキングの練習には本書が最適です。これほど優れたテキストは滅多にありません!