若者の海外旅行離れ、ビール離れ、クルマ離れ。
すべて実際に起こっているのでしょうか?
この記事では、小林直樹著『だから数字にダマされる』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『だから数字にダマされる』の要約と感想
まずは本書の要約から。
あるデータから導き出された結論がいつも正しいとは限らない。
データと接する際に重要なのは、思い込みを排除すること。
複数の具体例をもとに、私たちがどのようにして数字に騙されているのかを解説している。
以上がおもな内容です。
『ファクトフルネス』に似ています。
ただしこちらは日本人の著者が書いており、日本国内のデータや数字を用いています。
示されているデータは本書のほうが身近で、イメージしやすいでしょう。
若者は海外旅行から離れた?
若者の海外旅行離れ。
あなたも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、これは事実ではありません。つまり嘘です。
なぜなら、海外旅行の減少は人口減少によるところが大きいから。
割合で比較してみると、バブル期よりもいまの若者のほうが海外旅行をしているといいます。
若者は海外旅行から離れてなんかいないわけですね。
むしろ、「最近の若者は海外旅行をしないよな」とボヤく中年層よりも、海外旅行をしている割合が高い。
海外旅行離れのウラには、人口減少というカラクリがあったようです。
若者の「クルマ離れ」は本当?
では、「若者のクルマ離れ」はどうでしょう。
これは、事実です。
本書に載っているデータから、クルマへの関心が薄れていることがわかります。
ただ、「クルマ離れ」を起こしているのは若者だけではありませんでした。
ミドル世代もまた「趣味は車・ドライブ」の割合が減少しています。
つまり若者に限らず、幅広い世代でクルマ離れが進んでいるということです。
若者だけを槍玉に挙げるのはアンフェアだといわざるをえません。
自分も野菜嫌いなのに「野菜を食え」と叱る親、みたいな。
クルマへの関心が薄れている……気持ちはわかります。
クルマって面倒で、お金がかかって、事故の心配もあって。
眠たくなるような制限速度、ですからね。
「月曜配信が穴場」のワナ
ほかにも興味深いテーマがありました。
それは「年間のプレスリリースは月曜日がもっとも少ない」というもの。
※プレスリリース:企業や団体が新サービス・商品についてマスコミに知らせる文書
このデータが世間に広まったとき、どうじに「メディア載るためには月曜配信が穴場だ」という噂も広まったそうです。
月曜日はライバルが少ないわけですからね。
ところが、噂は誤りだったことがわかります。
というのも、月曜のプレスリリースが年間で少ないのは月曜に祝日が多いから。
それだけの理由でした。
「月曜配信が穴場」という認識は間違っていたわけです。
データや数字を鵜呑みにするのは怖いですね。
ダマされないためには、著者がいうように「なぜだろう?」と一歩踏みこんで考える習慣が欠かせません。
まとめ
本書は、高度なリテラシーを求める人むけの内容です。
「若者のクルマ離れ」と聞いたら、「ふぅ〜ん」で終わる人がほとんどではないでしょうか。
彼ら/彼女らに本書のスキルは必要ありません。
ごく一部の人だけが、「本当かな?」とデータに当たります。
で、若者がクルマから離れている事実を確認し、納得する。
これでもまだダメ。
クリティカルシンキングを用いてデータと向き合い、「若者だけでなくミドル層もクルマ離れを起こしている事実を突き止める」。
それが、著者が要求するスキルです。
すっごい高度。
そこまでやりますか?
つまりいいたいのは、これが単なるレシピ本ではなく、スパイスに特化したレシピ本であるということです。
スパイス、それは料理を極めた人たちだけに許された領域。みたいな。
言わんとしていることはわかります。クリティカルになるべきなのもわかる。
ただ、データとにらめっこするだけの気力が湧いてこないのです。
したがって、『だから数字にダマされる』の前に、私なら「怠惰」をつけますね。
自己責任です。
以上、小林直樹著『だから数字にダマされる』の要約と感想でした。