強迫性障害という病気について知ることができる一冊です。
コミックエッセイなので、スラスラと読み進めることができます。
この記事では、菊晴著『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』の要約と感想
まずは本書の要約から。
著者はもともと几帳面な性格だった。
ところがある日から、家の鍵をかけたか、手が汚れているのではないかなどといった些細なことが気になって仕方なくなり、不安で家から出られなくなる。
医師に告げられたのは「強迫性障害」という病名。
強迫性障害とはどのような病気で、著者はどのようにして向き合ったのか。
家族は患者とどのように接するのが良いか、などを綴ったコミックエッセイ。
以上がおもな内容です。
「強迫性障害について知りたい」という方に本書はおすすめです。
強迫性障害とは?
世の中の誰もが、さまざまな不安を抱えながら生きています。
お金のこと、健康のこと、仕事のこと、老後のことなど。
生きている限り何らかの不安があるのは当然ですが、なかには、些末な不安が頭から離れず、おなじ行動を何度も繰りかえしてしまう場合があります。
- 家の鍵をかけたか
- 水道の水を止めたか
- 手が汚れているのではないか
- すれ違った人を傷つけていないか
こうした不安に駆られ、確認作業を繰りかえしてしまうのが、強迫性障害という病気の特徴です。
自分で「くだらない不安」だとわかっていても、確認せずにはいられないといいます。
日常生活に支障が出て、就労は困難となります。
もともと完璧主義で几帳面だった
著者はもともと完璧主義で几帳面なところがあったそうです。
ところがある日から、自分がおかしくなっていることを自覚するようになります。
たとえば本書では、「水道の水を止めたかどうかが不安」だというエピソードが描かれていました。
水道の栓を閉めて、水が止まります。
でも著者は「止まっているかどうか」が不安で仕方ないのだといいます。
目で見て、出ていないことはわかります。
わかっていても、水が出ているかもしれないと思い、不安になるのだそうです。
そこで著者は、水が出ていないかどうかを確認するべく、蛇口の下に手を出します。
それから手を眺め、濡れていないことを確かめます。
「手が濡れていないということは、水が止まっているということでいいんだよね?」という具合です。
このとき著者は「ついに自分の頭がおかしくなった」と思ったそうです。
自身のおかしさを客観視できていながらも、確認行動がやめられない。強い不安に襲われて心が落ち着かない。
それが強迫性障害です。
ポイントカードを水で洗う
ほかにも著者は、あらゆるものを「汚れている」と感じ、洗っていたといいます。
洗うのは手に限りません。
本書のなかには、著者がポイントカードを洗う描写がありました。
家の床に落としてしまったポイントカードが汚れたと思い、水で洗ったそうです。
几帳面や潔癖性の範疇を超えています。
コップも汚れていると感じたら、何度でも洗います。
もう一回だけ洗おう。
いや、不安だからもう一回だけ。
いや、やっぱりもう一回だけという具合に、いつまでもコップを洗い続けてしまうのだそうです。
まとめ
強い不安を強迫観念といい、その不安を解消するために繰りかえす行動を強迫行為といいます。
強迫観念と強迫行為が合わさったものが、強迫性障害です。
本書は患者だけでなく、サポートする家族が読んでも役に立つ内容が盛り込まれています。
たとえば、「無理に外へ連れ出そうとしないほうがいい」と著者は述べています。
強迫性障害になった人は、家に引きこもりがちです。
すると心配した家族は、リフレッシュのため、気分転換のために患者を外へ連れ出そうと考えるかもしれません。
ところが、です。
父親に連れ出されて散歩をしていた著者は「すれ違った人に怪我を負わせたのではないか」という強迫観念に駆られ、何度も振り返って確認してしまいました。
これでは気分転換どころか、患者に苦痛を与えるだけで、むしろ逆効果です。
このように、患者本人にしかわからない苦痛、患者だからこそ発信できるメッセージが本書には詰まっています。
本書は、強迫性障害と診断された家族やパートナー、恋人のことを理解する一助になります。
大切な人の症状を知り、適切なサポートを行うためには、病気に関する知識が欠かせません。
いっぽうで患者本人が読めば、おなじ症状の人がいると知り、心が軽くなる可能性があります。
著者は強迫性障害を知らなかったため、異変を感じていても、自分に何が起こっているのかわからなかったのだそう。
著者の体験談から、症状改善のヒントを得られるかもしれません。
以上、菊晴著『几帳面だと思っていたら心の病気になっていました』の要約と感想でした。
結論。強迫性障害の患者本人、その周辺の方々に向けたコミックエッセイ。マンガなので読みやすい。