医療技術が発達し、人々がなかなか死なない時代になっています。
長寿社会を生きる私たちに、「死」について考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
この記事では、村上陽一郎著『死ねない時代の哲学』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『死ねない時代の哲学』の要約と感想
まずは本書の要約から。
医療技術が発達し、死が遠い存在になった。
だが、死は避けられないものであるがゆえに、死について考える機会が必要である。
私たちは死をどういう形で迎えるのか、社会として死をどう考えるか、安楽死の是非など、答えのない「死」をテーマに哲学する。
以上がおもな内容です。
「死」についてじっくり考えたい方に本書はおすすめです。
遅かれ早かれ死ぬのであれば、今から考えておいても損はない。死に直面してからあたふたするよりは。
安楽死をどう考えるか
なかなか死ねない時代において注目されているのが、安楽死です。
安楽死とは、本人の意思によって死を選び、致死性の薬物を服用する、あるいは延命行為を中止することを指します。
安楽死については世界各国で議論されており、実際に安楽死が合法となっている国も存在します。
日本では法律で安楽死が認められていないため、薬物投与等による死を選ぶことはできません。
本書では、さまざまな国の安楽死にたいする考え方、安楽死の事例などを紹介し、この問題について論じています。
タイトルに「哲学」とあるように、著者が持論を述べるというよりは、安楽死の是非について考える過程に重きが置かれていました。
安楽死に賛成派、反対派の意見がそれぞれ紹介されており、いずれも説得力を持っています。
読者が安楽死について考えるきっかけを本書が与えてくれる、といえるでしょう。
どのような最期を迎えたいか
病気になって終末期を迎えたとき、どのような死が望ましいか具体的に考えておくべきだ、と著者はいいます。
なぜなら、いざ病に冒されて死に直面したとき、冷静な頭で死について考えることは難しいからです。
死に直面していないうちに「死生観」を持つことが、より良い終末を迎える助けになるといいます。
- 胃瘻を造設するか
- 1日でも長く生きることが善か
- 死はどんな場合でも避けるべきか
- 安楽死を選べるとしたらどうするか
- 自殺についてどのように考えるか
などについて考えることで、 自らの死生観を築くことができるでしょう。
「死生観を持つ人は多くない」と著者はいいます。
死について、そろそろ一度考えておいても良いのかもしれません。
なぜなら、 自分がいつ死ぬか、誰にもわからないからです。
なんの根拠もなく、ただ漠然と「自分は平均寿命くらいまでは生きるだろう」などと考えていませんか?
まとめ
死、とりわけ安楽死について多く扱っている本でした。
国内外で起こった事例をもとに、安楽死をはじめとする死について考えるきっかけを、本書はわれわれに与えてくれます。
死について、明確な答えはありません。
安楽死を善とする意見もあれば、悪とする意見もあります。
重要なのは、私たち一人ひとりが死生観を持ち、あらかじめ自身の死について考えておくことだといえるでしょう。
なぜなら、死が迫ってからでは、パニックに陥って冷静に考えられない可能性があるからです。
村上先生の豊富な知識に触れながら、あなたも自らの死生観を築いてみませんか?
すべて医者任せではなく、患者自身が考え、判断を下さなければならない時代において、「どのような最期を迎えたいか」を考えておくことは必須だといえます。
以上、村上陽一郎著『死ねない時代の哲学』の要約と感想でした。
結論。本書はすべての人におすすめ。なぜなら、すべての人がいずれ死ぬ運命にあるから。目を背けていてもいつか死ぬなら、いっそ直視し、死について考えておくべき。