浴室、エアコン、冷蔵庫、スマホケース、吹奏楽器、ソフトコンタクトレンズ、足の裏など、さまざまな場所にカビは生えます。
つまり、私たちにとってカビは身近な存在なのです。
カビについて、あなたはどれだけ理解しているでしょうか。
この記事では、浜田信夫著『カビの取扱説明書』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『カビの取扱説明書』の要約と感想
まずは本書の要約から。
カビとはいったい何なのか。
カビはどれくらい人体に悪いのか。
カビ対策として何をすべきなのか。
切っても切れないヒトとカビの関係について、カビ研究の第一人者が解説する。
以上がおもな内容です。
カビはほんとうに有害なのでしょうか?
醤油や味噌の醸造にカビが使われていることをあなたはご存知でしょうか?
カビについて正しい知識を得たい方に本書はおすすめです。
著者曰く、カビよりも恐ろしいのは細菌なのだそう。
カビについて幅広く解説している
本書には、カビについての幅広い解説が載っています。
たとえば、カビは菌類の仲間だといいます。
菌類には、カビのほかに、キノコや酵母も含まれます。
では、毒性のありそうなカビにたいして、おなじ菌類に属するキノコや酵母は、どうして食べても平気なのでしょうか。
素朴な疑問ですが、この疑問に自信をもって答えられる人はそう多くないはずです。
キノコや酵母には毒性がないから?でも、発酵食品にはカビが利用されている。
本書はこのように、おなじ菌類に属しているキノコや酵母とカビは何が違うのか、といった分類学上の説明からはじまります。
そして、
- 発酵に使われるカビの種類
- 家電に生えるカビ
- 山火事後のカビ
- カビの有害性
- ヒトとカビの闘い
などへと話が展開していきます。
イラストは少なく、本書はほとんど文章のみで構成されていました。
ゆえに、カビについてサクッと学べる入門書、といったイメージで本書を買ってしまうと、後悔するかもしれません。
本書はむしろ、文章を読みながらじっくり理解していくタイプの本です。
説明そのものは難しくありませんが、だからといって「カビの入門書」というほどわかりやすい本でもない、といった感じです。
イラストや写真があれば、本書の印象はまた違っていたかもしれません。
恐ろしいカビ毒「アフラトキシン」にモヤモヤ
あなたがカビの研究者でないとしたら、「カビの有害性や対策を知りたい」といった健康意識がきっかけとなり、本書に興味を持ったのではないでしょうか。
もちろん本書には、カビが生産する「カビ毒」についても書かれています。
カビ毒は穀物や果物などの食物から見つかることが多く、
- 肝障害
- がん
などのリスクを高める恐れがあることから、食品をとおしてカビ毒を摂取しないよう注意が必要だといいます。
カビ毒は300種類ほど見つかっており、なかでも凶悪なのが「アフラトキシン」というカビ毒だといいます。
アフラトキシンの毒性はカビ毒のなかでも別格で、体内に入ると動物の肝細胞を破壊し、肝静脈の閉塞から肝臓の機能を阻害し、動物を死に至らしめることがあるそうです。
ごく少量であっても、アフラトキシンを長期間にわたって摂取しつづけると、発がん性が非常に高まるとも本書には書かれていました。
そんな有害なアフラトキシンは、たとえば、ピーナッツから見つかることがあるといいます。
ピーナッツにカビが生え、そのカビがアフラトキシンを生産しているということ。
ところが残念なことに、本書にはカビ毒への対処法が載っていませんでした。
カビ毒は熱に強いものが多く、加熱してもカビ毒をなくすことはできないそうです。
つまり、カビ毒の危険性だけ散々教えられ、肝心の対処法は教えてもらえない、ということです。
カビ毒を避けるのは難しいのでしょう。
カビ毒への対処方法が確立されていないのなら仕方がありません。
とりあえず、アフラトキシンに汚染されているリスクのある食材として、ピーナッツは食べないほうが良いのかもしれません。
まとめ
もしあなたがカビの健康被害を気にしているとしたら、エアコン内部に生じるカビにも憂慮しているのではないでしょうか。
本書には、エアコンのカビにたいする具体的な対処法が記されていました。
ゆえに、読んでも役に立たない、というわけではありません。
本書を読めばカビについて詳しくなれますし、吹奏楽器の内部はカビだらけだと知って吹奏楽器を見る目が変わりますし、カビが生えないようにする対策もいくつか学ぶことができます。
それから、スマホカバーにもカビが生える、という衝撃の事実を知ったりにもします。
本書を読んだあなたは間違いなく、今後ピーナッツを食べる気にはならないでしょう。
イラストや写真がないため「読みやすい本」とはいえないかもしれませんが、健康を守るためには、カビについて知っておいて損はないはずです。
なぜなら、ヒトとカビは切っても切れない関係にあるからです。
以上、浜田信夫著『カビの取扱説明書』の要約と感想でした。
結論。タイトルに違和感がある。この内容なら『カビの説明書』で良い。べつに、カビを培養してあれこれしまよう、といった内容ではないので。つまり、私たちがカビを取り扱うわけではないので。