本書はまるで、名言がほとんど出てこない名言集のような本でした。
ゆえに、おすすめはしません。
たとえるなら、猫がほとんど写っていない猫の写真集のようなものです。
一流と呼ばれる人たちの仕事術を説いた本はほかにいくらでもあります。
世間のいたるところに美容室があるのとおなじです。
わざわざ本書を選んで読み、お金と時間を浪費することはないといえます。
この記事では、戸塚隆将著『世界の一流36人「仕事の基本」』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『世界の一流36人「仕事の基本」』の要約と感想
まずは本書の要約から。
一流の人たちはなぜ圧倒的な結果を出せるのか。
その秘訣が本書に詰まっている。
当たり前のことを、当たり前のように積み上げていこう。
それが一流になるために欠かせない条件だ。
講談社のウェブメディア「クーリエ・ジャポン」の連載に加筆修正したものが本著のベースとなっている。
以上がおもな内容です。
一流になるためには、当たり前のことを当たり前のように積み上げていくと良いそうです。
本書から得られる有益な情報は、ほかにありません。
そういうわけですので、あなたはもう、本書を読み終えたも同然です。
一流人の言葉はひとことだけ
本書には、
- ビルゲイツ
- ウサインボルト
- スティーブジョブズ
- ココシャネル
- ウォーレンバフェット
- 松下幸之助
など、一流と呼ばれる人たちの言葉が載っています。
ただ、言葉が「載っている」といっても、ほんのわずかです。
イメージとしては、100円回転寿司の「イクラ軍艦」に乗っているイクラとおなじくらい少量だと思ってください。
イクラというよりほぼキュウリ。
一流の人たちの言葉がひとことだけ紹介されており、あとは著者の解説やら感想やらが述べられています。
著者自身のこと、著者が一流の人物の言葉に触れたときの感想など、およそどうでも良い内容がダラダラとつづいていました。
本書を手にとった読者は、間違いなく「世界の一流36人」から仕事術を学びたいと考えていることでしょう。
著者の持論を知りたいなどとは、誰も思っていないはずです。
「世界の一流」というエサで読者を釣り、持論を展開する、そんな卑怯な本だといえます。
本書を読んだからといって、ビルゲイツやウォーレンバフェットに詳しくなれるわけではありません。
その代わり、戸塚氏の過去や思考について、読者はだいぶ詳しくなれます。
他人の言葉を使った自己啓発書
心理学の用語に「ハロー効果」というものがあります。
ハロー効果とは、偉い人が語っていることが正しいと思ってしまう、容姿端麗な人は信用できると思ってしまう、などといった、ある種の錯覚を指します。
本書は、そんなハロー効果を用いた自己啓発書です。
たとえば、著者が「知恵や思想を身につけるだけじゃダメだ。それらを武器にして何かを実践しなさい」と説いたところで、まるで説得力がありません。
とろこであなたは誰ですか?ってなもんです。
では、上の言葉を福澤諭吉が述べていたらどうでしょう。
福澤諭吉の言葉であれば「なるほど、そういうものか。実践が大事なんだな」と受け入れてしまうのではないでしょうか。
これが、ハロー効果です。
実際、上の主張は福澤諭吉によるものです。
このように著者は、まず一流と呼ばれる人たちの言葉を紹介します。
ハロー効果が発動し、読者は一流人のメッセージを受け入れます。
ここで著者が便乗し、どさくさに紛れて持論をぶっ込んでくる、という構成です。
一流と呼ばれる人たちの考えを広めたいのではなく、一流の言葉を都合よく拝借して自分の主張に説得力を持たせたいだけ、自分の考えを知って欲しいだけ、そんな印象を受けました。
その証拠に本書は「戸塚氏がどう考えたか」という記述だらけです。
ビルゲイツがどう考えたかには興味があっても、戸塚氏がどう考えたかについて、読者は誰も興味がありません。
まとめ
ひとことでいえば本書は、効率の悪い名言集です。
一流と呼ばれる人たちの言葉はわずかしか載っておらず、代わりに、著者の過去やら感想やら考えやらがギッシリ詰まっているからです。
フルーツジュースでいえば、果汁1%、みたいなものだといえます。
つまり果汁も、世界の一流の考えも、ほとんど入っていません。
本書から学べることがあるとすれば、
- 当たり前のことをやるのが大事だ
- ハロー効果は使えるテクニックだ
これらの2点です。
ゆえに、本書をおすすめできる人がいるとすれば、「ハロー効果を駆使して誰かをうまいこと言いくるめたい人」だといえます。
ハロー効果をどのように使えば良いのか、そのサンプルに本書はピッタリです。
以上、戸塚隆将著『世界の一流36人「仕事の基本」』の要約と感想でした。
感想。果汁1%の名言集、みたいな本。世界の一流36人は、ハロー効果のために利用されているだけ。載っているのは「著者ただ一人の仕事の基本」だ。注意せよ。
一流の経営者に関して、当サイトではこんな本も紹介しています。
一流と呼ばれる人たちは、たいてい、前向きな考え方をしているようです。
大切なのは、起こった物事をどう解釈するか、です。
人間万事塞翁が馬、というやつ。