丹羽氏は、伊藤忠商事元会長です。
本書には、AI時代の生き方、幸せ、努力などについて著者の考えがまとめてありました。
「人間として生まれたならば、人間のことをよく知らなければ人生をまっとうできない」
と丹羽氏は指摘しています。
平安時代からほとんど変わらないという「人間の本性」とは、いったいどんなものでしょう。
この記事では、丹羽宇一郎著『人間の本性』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『人間の本性』の要約と感想
まずは本書の要約から。
コンピュータやAI技術は目まぐるしいスピードで進化している。
だが、人間の本質や本性は、古代ギリシアや平安時代からほとんど変わっていない。
人間はしょせん動物であり、飢え死にしそうになったら、人の命を奪ってでも食べ物を得ようとする本能があることを忘れるべきでない。
このような「動物の血」がわれわれに流れていることを前提に、AI時代の生き方、幸せ、努力などについて説く。
人間という生き物の説明書。
以上がおもな内容です。
読書家であり、かつ人生経験豊富な著者の叡智が詰まった一冊でした。
人間について説いているということは、すなわち、私たちそれぞれについて説いていることにもなります。
つまり、本書を読むことで深く知れるのは「私たし自身」に関してです。
動物の血が流れている
本書のなかで印象的だったのは「動物の血」というワードです。
動物の血とは、われわれ人間の本能を指します。
もし食べ物がなくなって飢え死にしそうになったとき、他人の命を奪ってでも食糧を確保しようとするのが私たち人間の本能であるとし、この暴力的本能を「動物の血」と著者は呼んでいました。
人間の悪い部分や弱さは、動物の血がなせる業だと丹羽氏はいいます。
大切なのは、動物の血を、理性の血で抑えることです。
善悪というのは、理性の血が動物の血をコントロールできているかどうかで決まると著者は述べていました。
だからこそ、善だけの善人も、悪だけの悪人もこの世にはいないのだそうです。
「動物の血」というフレーズ、概念が、著者の主張をわかりやすくしていました。
秀逸な表現です。
私たちが自己中心的なのも、つい見栄を張ってしまうのも、すベては動物の血の仕業だといいます。
動物の血をいかにコントロールするか、人生の核心はこの一点に凝縮される、とまで著者は述べています。
クマや犬、アザラシや鹿とおなじで、私たち人間もしょせんは動物であり、「動物の血」が流れていることを認識するだけで、意識が変わるかもしれません。
- 不倫
- 浮気
- 暴力
- 窃盗
などの良からぬ行為を企んでいるとき、それはすなわち、われわれのなかで動物の血が騒いでいるときです。
この血をいかにコントロールするか、それが人生の核心だそうです。
そして、動物の血が流れていることを前提に「どうやって生きるべきか」を著者は説いていました。
達観した著者の考えを知れる
丹羽宇一郎氏は、まるで仙人のように達観しています。
そんな達観した著者の、達観した言葉に触れられるのが本書です。
たとえば、「問題がないのが幸せ」という前提は誤りだといいます。
なぜなら、人生に問題があるのは当然だからです。
「生きている限りつねに問題はついて回る、人生とはそういうものだ」
と割り切って考えられたら、なにか問題やトラブルが起こったとしても、過剰な精神的ストレスを受けずに済むのかもしれません。
それから著者は、「人生の勝負は最後に決まる」とも述べていました。
どれほど成功しようと、大勢から尊敬されていようと、死ぬ間際に多くの心残りを感じる生き方であれば、幸せな人生だったとはいえない、と丹羽氏はいいます。
長く生きていれば勝ち負けの局面はさまざまなところにあるけれども、目先の勝ち負けにばかりこだわっていたら、人生の本質は見えてこない、というわけです。
本質的で深いアドバイスではないでしょうか。
ほかにも、
- 心の強さは測れない
- 不安がなくなることはない
- 人間が理解しあえることはない
- AIを脅威ととらえる必要はない
- 怒りの感情が悪いわけではない
など、さまざまな達観した意見に触れられます。
結果として、
- 心の強さって幻想か
- 不安ってあってもいいんだ
- 人間って理解し合えないのか
- AIってそんなに怖いものじゃないのか
- 怒りの感情は消さなくても良かったのか
といった気づきや学び、安心感が得られます。
そして肩の力が、少し抜けます。
まとめ
まるで仙人に人生のアドバイスをもらっているかのような読書体験でした。
いずれの意見も本質を突いており、「確かになぁ」と思わされます。
本書は、「どう生きるべきか」を考えるきっかけになりますし、間違った思い込みや固定観念から解放されるヒントにもなります。
- 人生とは
- 人間とは
こんな哲学的疑問にぶつかっている方にとって、本書は参考になるかもしれません。
達観している仙人が「それはこうだよ」と教えてくれるからです。
ほんとうの仙人というのはたいてい山奥に住んでいるため会えませんが、本書なら、誰でもどこでも読めます。
仙人を探し求めてわざわざ山に分け入ったり、自分を探して世界を放浪する必要はありません。
すべて、真理がここに書いてあるからです。
以上、丹羽宇一郎著『人間の本性』の要約と感想でした。
結論。人間ってこうだよ、人生ってこうだよ、だからこうしてみたら、が詰まった一冊。読んでみたら?
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