100メートルを人より速く走れたら、陸上選手になれます。
では、もし私たちが2,000字の文章を人より速く書けたら、どうなるでしょうか。
どうにもならない、が答えです。
というのも、文章は誰かに「情報や考えを伝えるため」に書くものだからです。
メール、論文、レポート、報告書、ブログ、感想文、小説、どんな文章にもかならず読み手がいます。
したがって、私たちがいかにスラスラ書けれるかではなく、読者がいかにスラスラ文章を読めるかが大切、だといえます。
シェフがどれだけ手際よく調理できても、提供する料理がマズかったら客は来ません。
客が来なければ料理人の「速さ」は無意味です。
文章もおなじです。
読みにくい文章を「速く」書いても意味がありません。
勢いよくゴミを量産しているだけで、だったら書かないほうがマシです。
この記事では、
- 速く書こうとしない
- 読みやすい文章はゆっくり書かれている
など、「文章を速く書こうとする間違った努力」についてわかりやすく解説します。
欠点だと思っていた遅さを"武器"とするため、ぜひ参考にしてみてください。
文章を書くのが遅いとしても問題ない
マリオカートとは違い、世の中、なんでもかんでも「速ければ良い」わけではありません。
もし回転寿司のレーンが高速で回っていたら、お客は誰も寄りつかないでしょう。
速すぎて、注文した寿司を取れないからです。
あるいは、コーナーの遠心力でマグロが振り落とされて、シャリだけになった皿が回ってくるからです。
文章もおなじで、執筆スピードを上げてもロクなことになりません。
大切なのは、アイディアや事実を読み手に届けること、です。
急いで書いた文章は、高速で回っているレーンの寿司のようなもので、相手に届きません。
執筆スピードは二の次
流れるように書いた文章が、流れるように読める文章だとは限りません。
むしろ、短時間で書き上げた文章は雑になりがちです。
たとえば「て・に・を・は」がいい加減だったり、「〜ます。〜ます」とおなじ語尾が続いていたりして、テンポよく読めないことがほとんどです。
こうした粗悪な文章を速く書けれたところで、「文章が上手」だとはいえないでしょう。
もちろん、文章力があるともいえません。
事実、私たちが「読みやすい」と感じる文章には、書き手がかなりの時間と労力を費やしていたりします。
というのも、
- 読点を打つか
- 二文にわけるか
- 漢字かひらがなか
- 文章がくどくないか
- 論理が飛躍していないか
- ほかの言い回しはないか
など、文章を読者にスラスラ読んでもらうためには、さまざまな配慮を要するからです。
そして読み手にとっては、その文章が20分で書かれたものなのか、3時間かけて書かれたものなのか、知ったことではありません。
- 読みやすいか
- 内容が頭に入ってくるか
これがすべてだからです。
たとえるなら、「映画の撮影にかかった日数」が、私たちには関係ないようなものです。
作品が面白いかどうか、それだけを気にします。
2年越しで撮影していても、5日間で撮り終えていても構いません。
大事なのはクオリティです。
執筆スピードは二の次だといえるでしょう。
「書く速さ」は読者に関係ない
文章を書くスピードを上げたいと願う気持ちは、私たちのエゴです。
読者にはなんの関係もありません。
どうせ文章を書くのであれば、スピードを求めて自己満足するのではなく、読みやすさを求めて他者を満足させるべきです。
わかりやすいメール文章を書ければ、上司や取引先から「頭脳明晰な社員」だと評価されることでしょう。
誰でも理解できるブログ記事が書けれたら、アクセスを集めて広告収益へとつなげられます。
このように「読者がスラスラ読める文章」を追求すれば自分の利益になりますが、「文章をスラスラ書ける能力」を追い求めても、得るものはありません。
ですので、F1マシンのような速さで文章を書くのはやめましょう。
書こうとするのはやめましょう。
速く書くと雑になり、雑な文章は人に読んでもらえないからです。
誰にも読まれない文章は、誰にも見てもらえない特技とおなじで、無価値です。
だから、急ぐ必要はありません。
「読者がスラスラ読める文章(価値がある)」を書こうとすれば、スピードはどうしても遅くなります。
結局のところ、
- 読みにくい文章を速く書く
- 読みやすい文章をゆっくり書く
どちらが良いか、という話です。
自分のスピードを取れば読者のスピードが犠牲になりますし、読者のスピードを優先すれば、私たちの執筆スピードは落ちます。
よほどの天才でない限り、両方をどうじに実現させるのは不可能です。
まとめ
「文章を速く書きたい」という望みは捨てたほうが良いでしょう。
ライティングは、マリオカートとは違います。
執筆の速さで文章が評価されるわけではない、ということです。
流れるように書こうとするのではなく、読者が流れるように読めるよう工夫すべきです。
そのためには時間がかかります。
ですので、文章を書くのが遅いとしても、改善する必要はありません。
とはいえ、
- 文章が続かない
- 何を書いたら良いかわからない
といった理由で時間がかかっているとしたら、これは執筆以前の問題です。
- 何を伝えたいのか
- 何を伝えるべきなのか
これらをコピー用紙やノートに書き出して、アイディアを整理すると良いかもしれません。
文章が思い浮かばない原因は、たいてい「伝えたいこと」の曖昧さにあるからです。
以上、文章を速く書こうとする間違った努力についてでした。
【結論】文章は、事実や考えを他者に伝えるためのもの。伝達するために書く。だから「読みやすさ」が大事。速く書いた文章は雑になりがちで、価値が低い。運転しにくいクルマみたいなもの。スピードはスピードでも、読者が「読むスピード」を追い求めるのが、書き手の使命。
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