KDPでペーパーバックを出版した感想。大変だった2つの作業について

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2021年10月より、海外に遅れてAmazon.co.jp(日本)でもKDPでペーパーバックを出版できるようになりました。

 

ペーパーバックを出版するメリットは、ターゲット読者を増やせること、です。

たとえば、

  • Kindleのアプリや端末を持っていない
  • 電子書籍が何なのかよくわからない
  • 電子書籍に抵抗がある

Kindle版だけを販売していたら、ご覧のユーザーにはアプローチできません。

ターゲットは自ずとKindleユーザーに限定されてしまいます。

 

とあるユーザーがあなたの書籍に興味を示したものの、Kindle版しかないために購入をあきらめた……こんな機会損失を避けるためには、Kindle版にくわえてペーパーバック版も出版しておくことです。

 

ただし、ペーパーバックの出版作業にはそれなりに手間がかかります。

Kindle版とおなじ原稿と表紙をアップロードすればたった5分で紙書籍が出版できる、なんて簡単な話ではありません。

 

この記事では、

  • 原稿をPDF化する作業
  • 表紙のサイズを合わせる作業
  • ペーパーバック版のロイヤリティ
  • 収益性が高いのは圧倒的にKindle版

など、「KDPでペーパーバックを出版した感想」をわかりやすくお伝えします。

ぜひペーパーバック作成の参考にしてみてください。

 

 

KDPでペーパーバックを出版した感想

4年前にKDPから出版した電子書籍『ショートショートはじめました。』のペーパーバック版を作成してみました。

 

ペーパーバックを出版するために行うべき作業は、以下の2つです。

  1. 原稿のPDF化
  2. 表紙の作成

この2点さえクリアできれば、既存のKindle本を紙書籍としても販売できます。

 

ちなみにペーパーバックは、注文が入った時点でAmazonが印刷・発送するオンデマンド方式を採っています。

 

だから、著者/Amazonどちらも不良在庫を抱える心配がありません

仮にペーパーバックが1冊も売れなかったとしても、私たちが赤字に陥るリスクはない、ということです。

 

ありがちな自費出版のように、「印刷代を前払いして赤字からのスタート」なんて崖っぷちに立たずに済みます。

 

売れたぶんだけ儲けが出て、売れなくても損失が出ないのは、Kindle版もペーパーバック版もおなじです。

 

作業1. 原稿のPDF化

Kindle用の原稿をそのままペーパーバックに流用することはできません。

なぜなら、ペーパーバックの原稿は「書式を設定したPDF」としてKDPにアップロードする必要があるからです。

 

具体的には、

  • フォントの種類を決める
  • フォントのサイズを決める
  • ページの区切りを決める
  • 目次を作成する

こうした作業を行い、原稿をPDF化しなければなりません。

たとえば、Kindle本なら読者が好きようにフォントサイズを設定できますが、ペーパーバックはそうもいかず、私たち著者が文字のサイズを指定する必要があるのです。

 

Kindle本の作成に関して、私は「でんでんコンバーター」を利用しています。

でんでんコンバーターとは、テキストファイルをEPUB 3に変換してくれる無料サイトです。

 

でんでんコンバーターには、

  • 見出し:#
  • ページ区切り:=

ご覧のような「独自の表記ルール」(HTMLで見出しにh1〜6を使うようなもの)があり、変換後の文章に反映されます。

がしかし、上のような記号が含まれた文書をそのままPDF化し、ペーパーバックとして出版することはできません。

 

なぜなら、#や=といった記号がそのまま紙書籍に印刷されてしまうからです。

 

そこで、「でんでんコンバーター」用の表記を原稿からすべて削除し、代わりに手作業で見出しを作ったり、目次を作ったり、ページを切り替えたりしました。

 

私が出版した『ショートショートはじめました。』は2万5千字程度で、さほど文章量が多いわけではありませんが、それでも編集・確認作業に2〜3時間を要しました。

 

ほかにも、「縦書き・横向き」の原稿がペーパーバックの規定に合わなかったので、「縦書き・縦向き」にフォーマットを変更しました。

「でんでんコンバーター」なら自動処理してくれる「縦中横」を、ひとつひとつ手作業で編集したりもしました。

 

こうした変更およびミスがないかどうかの確認作業に、それなりの時間がかかります。

 

ペーパーバック用のPDFを作成する際には、Kindleの原稿(原本)を修正するのではなく、原稿をコピーしてKindle版とペーパーバック版の2つに分けることをおすすめします。

それぞれの原稿を持っていれば、後の加筆・修正およびKDPへのアップロードがしやすくなるからです。

 

なお、出版前に「プレビュー画面」で確認したところ、私が提出したPDFは、指定のフォーマットからはみ出しており、サイズがまるで合っていませんでしたが、「縮小してサイズを合わせる」ボタンを押したら自動で補正されました。

ゆえに、PDFのサイズについて気にする必要はなさそうです。

 

 

作業2. 表紙の作成

Kindleの表紙は「縦長の長方形」ですが、ペーパーバックの表紙は「横長の長方形」です。

形やサイズが異なるため、Kindle用の表紙画像をそのままペーパーバックに使うことはできません

 

ペーパーバックの表紙が横長であるのは、「裏表紙までデザインできるから」です。

表紙と裏表紙をそれぞれ個別にデザインするのではなく、表紙と裏表紙をひとつなぎでデザインする仕様になっているため、アップロード画像は「横長の長方形」が指定されています。

 

なお、ペーパーバック版の表紙サイズは「12.079in × 8.520in」が指定されていました。

 

サイズが合わない場合はエラーとなり、出版できません。

原稿用のPDFにはサイズの自動補正機能がありましたが、表紙におなじ機能はありません。

 

裏表紙をデザインしないなら、「Kindle版の表紙画像」を画面の左側にレイアウトし、右側は空けておくと良いでしょう。

というのも、印刷時に、中央より左側が表紙、右側が裏表紙となるからです。

 

ちなみにペーパーバックは、プレビューで問題がないことを確認しなければ出版できない仕様になっています。

ちょうど、映画館でチケットを見せなければ上映館に入れないようなものです。

 

だからたとえば、

  • 表紙画像が見切れている
  • 文章の下部ないし上部が切れている

こんなまともに読めない"欠陥品"の著書が世に出る心配はありません(プレビュー画面でエラーが出るため)。

 

原稿のPDFと表紙画像をKDPにアップロードしたら、あとはプレビュー画面に表示される「Amazonからの修正指示」に従って作業すれば、出版に漕ぎつけられるはずです。

Amazonからの修正指示がなければ、そのまま次のステージ(価格設定画面)に進めます。

 

ペーパーバックのロイヤリティと価格設定

Kindle本(電子書籍)のロイヤリティは70%、配信コストは1円です。

それにたいして、ペーパーバックのロイヤリティは60%、印刷コストは400円です。

 

印刷コストの400円は固定であり、追加ページごとのコストは生じません。

つまり、著書のページ数が60ページでも、500ページ超の超大作でも、400円の印刷コストは変わらない、ということです。

 

私は『ショートショートはじめました。』のペーパーバックの価格を1,000円に設定しました。

ロイヤリティが60%なので、発生する印税は600円です。

ただし、ロイヤリティから印刷コストが差し引かれるため、実際に支払われる印税は1冊につき200円です。

 

ご覧のように、ロイヤリティから400円の印刷コストを支払う必要があるため、ペーパーバックの価格を667円よりも安く設定することはできません

 

ペーパーバックの最低価格が667円であることから、「1冊400円で販売して多くの人に読んでもらおう」といった低価格戦略は取れませんのでご注意ください。

印刷コストをロイヤリティから捻出する関係上、三島由紀夫や森鴎外の文庫本よりも高額になってしまう、ということです。

 

1,000円のKindle本1冊につき700円の印税が得られることを考えれば、200円にしかならないペーパーバックを売り上げても「あまり儲からない」といえるでしょう。

印刷コストという名の経費が、紙書籍の利益を圧縮してしまうからです。

 

ちなみに、ペーパーバックの価格を1,000円に設定した場合、Amazonでの販売価格は消費税10%を上乗せした1,100円となります。

 

得体の知れないショートショートに1,100円を出してくれる"物好きな読者"がいるのかどうかは謎ですが、選択肢が多いに越したことはないでしょう。

 

KDP作家のなかには、読者から「紙書籍があれば買いたい」だとか「すでにKindle版を持っているが、紙で読み直したくて注文した」といった声が届いた人もいるようです。

あなたの著書にも、ペーパーバック版を待ち望んでいる熱心な読者がいるかもしれません。

 

 

まとめ

ペーパーバックの作成は容易ではなく、出版したからといって売れる見込みもありません。

いわば自己満足です。

 

が、Kindle版にくわえてペーパーバック版も出すことで、著書の売上を最大化できます。

なぜなら、「面白そうだけど……電子書籍しか売ってないからやめておこう」と(これまでは立ち去っていた)読者を取りこぼさずに済むからです。

 

クルマでたとえるなら、白いボディ色だけに絞って売るよりは、黒も設定したほうが売上アップを見込めるようなものです。

 

あなたもKindle本を出版しているなら、ペーパーバックを出していないぶん機会損失が生じているかもしれません。

 

Kindle本の原稿と表紙画像にちょっと手を加えるだけでペーパーバックも出版できます。

在庫を抱えたり、印刷代を前払いしたりする必要はありません(ビジネスとしては理想的)。

 

売れる/売れないに関係なく、私は今後『ショートショートショートのビル1F』シリーズも順次ペーパーバック版を出そうと考えています。

 

ただし「儲け」を最優先に考えるなら、ペーパーバックの出版作業に時間をかけるのではなく、次の著書の執筆に時間を回したほうが合理的です。

というのも、ペーパーバックは値段が高い割に収益性が低いからです。

 

くわえてペーパーバックは、Kindle本と違って「Unlimitedで読まれたぶんだけロイヤリティが支払われる」こともありません。

すなわち、ペーパーバックで稼ぐのは難易度が高い、ということです。

 

「紙の本を出すのが夢だった」という方は、ぜひペーパーバックの出版にチャレンジしてみてください。

 

以上、KDPでペーパーバックを出版した感想でした。

【結論】もっとも時間を要したのは、原稿をPDF化する作業。EPUB 3変換用の記号を消したり、体裁を整えたり、おもに「確認作業」に時間がかかった。ロイヤリティはKindle本より低く、印刷コストが差し引かれたら印税は"僅か"になるが、それでもペーパーバックを出す意義はあると思う。読者の選択肢が増えるし、紙の著書があるってなんだか嬉しいし(著者は印刷コストを払えば著者用コピーを購入可能)。

 

ネット通販サイトAmazonでは、掌編小説『ショートショートはじめました。』がごく稀に売れたり、何かの手違いでUnlimitedで読まれたりしています。

Kindle版、ペーパーバック版、好きなほうからお選びいただけます。