夏は暑い。だから半袖のシャツを着て、半ズボンを穿く。ここまでは極めて合理的な判断だと思う。
がしかし、その格好でニット帽を被って歩く人がいる。
冬にアイスを食べるという不可解な行動を理解しかけていたところへ、夏ニット帽が登場した。なんてこった。まだ冬アイス人間の処理すら済んでいないのに。
過負荷で私の脳ミソサーバーはダウン寸前である。
クソ暑い時期にニット帽被ってる人ってなんなんだ。
夏にニット帽って寒いの?
私にとってニット帽は防寒アイテムだ。いや、誰にとっても防寒アイテムである。
ということは夏ニット帽人間は超寒がりなんじゃないのか、という仮説が浮かび上がってきそうなものだが、暑さに全力で対抗している半袖半ズボンスタイルがそんな仮説を容赦なく撃沈する。
やはり彼らも暑いのだ。てっきりブラックジャックみたいなタイプかと思ったけれど、ちがうらしい。
お洒落なんですこれが
ひょっとすると私は常識にがんじがらめにされていたのかもしれない。ニット帽は寒いときに被るものだと信じて疑おうとしなかった。ちょっとは疑え。
そんな怠惰な私とちがって、常識に疑問を投げかけた人々がいた。
「ニット帽って夏に被ってもいいんじゃね?」というわけである。
発想力に2%、行動力に98%の配分で賛辞をおくりたい。あっぱれ。
寒くても脚を露出している女性たちがいる。彼女らはいう。
「ファッションは我慢と気合なんです」と。
なるほど、夏ニット帽人間もまた我慢と気合、というわけか。
夏ニット帽の代償は大きい
お洒落のためのやせ我慢。真夏に防寒アイテム。やはり釈然としない。
夏にニット帽なんて被ったら頭が蒸れる。そしたらハゲる。
私はこう考えている。
それも、ご飯を食べる、便が出る、くらい自明な現象として。
蒸れないのか気になって調べてみたら、「サマーニット帽」という初めましてワードに遭遇した。
彼らが被っているアレはサマーニット帽というらしい。麻やコットンでできており、冬用のそれとはちがう。見た目ほどは暑くないそうだ。
でも蒸れるでしょ。
被っていない人にくらべたら有意に蒸れるでしょ。
そしたらハゲるでしょ。困るでしょ。お洒落してハゲたら困るでしょ。
髪は命でしょ。お洒落は髪型からでしょ。いつ脱ぐの?今でしょ。
……私のなかに眠っていた林修DNAのスイッチがオンになってしまった。
サマーニット帽に続け!
真夏ニット帽を解析してみたところ、季節感のギャップという真理にたどり着いた。ほほう、なるほどなるほど。
季節感のギャップはすなわちお洒落である、と。
それならばと、さっそく私もいくつか考えてみた。
夏部門
まずはサマーコレクションのお披露目である。
これがギャップという名のお洒落だ。
真夏ダウン
街中を20分も歩けば熱中症でダウンすること必至。ゆえになかなか着用する者が現れず、差別化できる。個性的である。
サマー耳あて
耳の発汗を促す。
サマーニットとの相性は抜群。
真夏コタツ
インテリアにもギャップ(お洒落)を。
真夏に使うコタツである。パワーは若干弱め。もちろん冷気は出ない。
冬部門
引き続きウィンターコレクションをご覧あれ。
テーマは〜季節感も羞恥心もかなぐり捨てろ〜である。
カシミヤ半袖
カシミヤという上の句にはセーターという下の句が定番である。が、下の句を半袖にしてみた。
これを着て友人に会えば、確実に「寒くないの?」と訊かれるだろう。たぶん大丈夫。なんてったってあのカシミヤである。
短パンウィンドブレーカー
膝下のウィンドをブレイクすることは諦めている。
「バカじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、じゃあなんでサマーニット帽はバカじゃないのか教えて欲しい。誰かが教えてくれるまで私はやめない。
真冬扇風機
チャットモンチー『真夜中遊園地』のような字面だが、真冬扇風機にあんな疾走感はない。あるのは違和感だけ。
真夏コタツ同様パワーは弱め。もちろん寒い。
君がファッションリーダーになれ!
最先端のオシャレを知ることができたという点で、このブログを読んだあなたはラッキーだ。
サマーニット帽が流行ってカシミヤ半袖が流行らない理由がどこにもない。
が、不思議なことに、カシミヤ半袖を製造しているメーカーがどこにもない。
いや、そもそもお洒落の正解なんて、どこにもないのかもしれない……。
【結論】サマーニット帽は哲学