この記事では『死刑囚200人最後の言葉』を読んだ感想を書いていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
『死刑囚200人最後の言葉』の感想
本書にはまずはじめに「死刑についての基礎知識」の説明があります。
それから40人の死刑囚について、起こした事件の概要と、死刑判決が出てからの様子が4ページでまとめられています。
タイトルは『死刑囚200人最後の言葉』ですが、実際に紹介されているのは40人だけ。
それに、2019年8月の出版時点で未執行の死刑囚も何名か含まれています(つまり「最後の言葉」ではない)。
タイトルと内容に相違があるといえます。
死刑についての基礎知識
死刑の基礎知識を読み、自分が死刑というものをいかに知らなかったかを認識しました。
たとえば死刑になる犯罪。これは殺人罪だけではないんですね。
国家転覆計画を罰する内乱罪など、クーデター系の犯罪は死者が出ていなくても死刑判決を下すことができるのだそう。
死者ナシでも死刑になることがあるとは、驚きでした。
それから、世論の死刑支持率が8割にのぼること、死刑囚本人には当日の朝8時に通知しそのまま執行すること(非人道的とする意見あり)、死刑囚の遺族には「執行後」に連絡が入ることなど。
死刑に関する情報を網羅的に知ることができます。
こうした知識なくして、死刑制度に賛成・反対をすることはできないように思えました。
死刑について考える
死刑とは、ものすごい制度です。
国(法律)によって殺されるわけですからね。
「人を殺してもいいか?」と聞かれたら、誰しも「ダメだ」と答えるでしょう。
でも、「極悪非道なことをした人は?」という問いかけには、「そいつは殺してもいい」と答える。そういうことです。
つまり人を殺していい状況があるということですよね。
たくさんの人々を殺害した人間が、殺人という悪を、おなじく殺人という善によって償う。
なんというか、賛成・反対などと簡単に口に出せないと感じました。
2時間以内に死ぬ状況
死刑執行という状況においてもっとも特殊なのは、死刑囚の死が確定していることです。
目隠しをされ、首に縄をかけられ、所定の位置に立ち、床が開く。
これで死にます。それも確実に。
ふだん生活しているなかで、私たちは「自分がいつ死ぬか」を知ることなどできません。
たいていは平均寿命まで生きると信じて、死を意識せずに生活しています。
病で余命宣告されたとしても、ぴったり宣告通りに命を落とすわけではない。さらに3年、5年と生きるケースもありますし、回復するケースもあります。
そう考えると、死刑だけではないでしょうか。
「自分はいまから2時間以内に死ぬ」と確信する状況が生まれるのは。
そこにはいっさい希望などありません。確実に死を迎えます。
逃れる道はない。
自分はあと2時間で死ぬ。1時間で死ぬ。
10分で死ぬ。1分で死ぬ……。
そのとき、いったいどんな気持ちになるのでしょう。
想像してみましたが、私はとてもその恐怖に耐えられないと感じました。
極悪人は死んで当然か?
「酷いことをしたんだから、それくらいの償いは当然だ」
そう感じる人もいるでしょう。
国としてもそう考えているから、死刑制度が存続しているわけです。
(死刑囚をもっと苦しめろと発言して炎上したYouTuberもいます)
しかしながら本書を読むと、自身の罪を深く反省し、改心している(ように見える)死刑囚も少なくありません。
ハイデガーの『存在と時間』によれば、人間は死を覚悟することで倫理的に(善く)生きられるようになるといいます。
死刑囚は私たちよりも「死」を考えている。
じゃあ、執行直前の死刑囚と私たちは、どちらのほうが倫理的で、善い人間なのだろうか。そんなことを思いました。
ひょっとすると、あくまでもその時点(執行直前など)では、死刑囚のほうが倫理的で良心的なのかもしれません。
深く反省し、我々以上に倫理的である人間を殺すことが本当に正義なのか、わからなくなります。
死刑執行まで7年
死刑確定から執行までは半年以内と、法律で定められています。
しかし守られていません。
平均すると死刑確定から執行までおよそ7年ほどかかっているのが現状です。
これは「死に怯える日々が7年続く」といえます。
長く生きられることは、死刑囚にとって喜ばしいことなのでしょうか。
それとも、神経が擦り減るだけの酷な状況なのでしょうか。
まとめ
私はこれまで死刑制度に肯定的でした。
というよりも、深く考えずに「いいんじゃない」くらいにしか思っていませんでした。
が、本書を読んだことで、手放しで賛成とはいえないと感じています。
賛成でも反対でもない。正直、なんともいえません。
自分が遺族の立場だったら……。見方によって善悪は変わります。難しいところです。
死刑制度を考えるうえで、本書はとても有意義だと感じました。
死刑判決が出た40の事件にくわえ、死刑執行前53時間のドキュメント(拘置所長が極秘録音したもの)などが紹介されています。
けっして明るい気持ちになるような本ではありませんが、死刑制度が存続する日本に住む者として、考えるべきテーマではないでしょうか。
以上、『死刑囚200人最後の言葉』を読んだ感想でした。