「どうして生命にそれほど価値があるのか」について、生物学者である福岡氏が語っています。
生命の価値を知りたい方に本書はおすすめです。
この記事では、福岡伸一著『最後の講義 完全版 福岡伸一』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『最後の講義 完全版 福岡伸一』の要約と感想
まずは本書の要約から。
NHKで2018年に放送されたドキュメンタリー番組「最後の講義」を書籍化したものが本書である。
福岡氏は「どうして生命にはそんなに価値があるのか」について語っている。
ヒトゲノム計画、機械論的生命観、自己同一性、エントロピー増大の法則、動的平衡など、さまざまな考えや概念を紹介しつつ、生命の神秘について論じる。
以上がおもな内容です。
本書を読めばきっと、あなたは自分の体に驚き、感心し、感動することでしょう。
「生命の凄さ」を知りたい方に本書はおすすめです。
平易な文章で奥深い内容
まず、本書はけっして難しい内容ではありません。
概念はやや難解なものもありますが、ベースが学生向けの講義ということもあり、生物について易しく説明されていました。
端的にいえば、奥深い内容をわかりやすい文章で説明している、といった感じです。
- ヒトゲノム計画
- 機械論的生命観
- 自己同一性
- エントロピー増大の法則
- 動的平衡
など、見慣れない用語も出てきますが、いずれも読者が理解できるように解説してありました。
専門性の高い新書よりもとっつきやすい内容だといえるでしょう。
著者が語っているのは「生命の価値」についてです。
生命というのは、知れば知るほど不思議であることがわかります。
たとえば、1年前のあなたと現在のあなたは、細胞で考えればほぼ別人です。
というのも、細胞がほとんどそっくり入れ替わっているからです。
にもかかわらず、なぜあなたはあなたのままでいられるのでしょうか。
自己同一性が保てる理由について、知ってみたいと思いませんか?
私たちの体は「流体」だった
私たちの体は「個体」だと考えている人がほとんどです。
しかし、著者は違います。
生物学者である福岡氏にいわせれば、人体は個体ではなく流体、なのだそうです。
少し長い時間軸で見たとき、私たちの細胞はつねに新しく作り替えられており、一定ではありません。
細胞の合成と分解が起こりつづけ、絶え間なく流れていることから、人体は「流体」であると著者は述べていました。
ではどうして人体が流体なのかといえば、それは「大きく変わらないため」だといいます。
モノを頑丈につくれば、しばらくは持ちますが、30年も経てば傷んだり劣化したりします。
人間は80〜100年生きるので、頑丈なだけでは不十分。
そこで生命は「頑丈さ」を捨て、あえて自分自身をゆるゆるやわやわにつくっておき、細胞を分解し、捨て、作り替えるという作戦をとったのだそうです。
こうした生命の仕組みについて「大きく変わらないために小さく変わりつづけている」のだと著者は指摘していました。
大きく変わらないために小さく変わるというのは、なんとも興味深い戦略ではないでしょうか。
生命だけでなく、ビジネスや人間関係においても応用できそうな考えです。
夫婦なら、大きく変わる(離婚)を防ぐために、小さく変わりつづける(人間的成長をつづけて飽きられないようにする)とか。
まとめ
「生命とはなんなのか」を知れる本でした。
たとえばあなたは、鼻を移植する、と聞いてどのような光景を思い浮かべるでしょうか。
目に見えている「鼻」をAさんから切り取って、Bさんに移植すれば完了でしょうか。
そうではありません。
嗅覚という機能も鼻であるとすれば、嗅覚機能に関係しているすべての神経を移植しなければならなくなります。
ではどこまで切り取れば良いのかというと、「体全体」だと著者はいいます。
これは鼻に限った話ではなく、耳や目についてもおなじです。
つまるところ、生命には部品がない、ということです。
ところが現在は、生命はさまざまな部品が組み合わさってできているという機械論的生命観が主流になっており、著者はこの生命観に警鐘を鳴らしていました。
あなたも、
- 鼻
- 目
- 脳
- 腕
- 心臓
- 小腸
- 太もも
- おしり
など、生命をあらゆるパーツに分けて考えていませんか?
まるで機械製品のように、それらの部品が組み合わさって人間ができていると考えてはいないでしょうか。
だとしたら、「そうではない」という著者の主張は、あなたへインパクトをもたらすに違いありません。
以上、福岡伸一著『最後の講義 完全版 福岡伸一』の要約と感想でした。
結論。これまでの生命観をひっくり返される。生命の凄さに感動する。そんな本。