「元証券ウーマン」なだけあって、著者は投資を勧めていました。
貯金するための方法だけでなく、投資についても多くのページが割かれています。
著者がいう「貯め体質」とは結局のところ精神論であり、本書を読んだからといって「お金が貯めたくて貯めたくて仕方ない」ってなマインドにはなりませんのでご注意ください。
この記事では、さぶ著『元証券ウーマンの一生使えるお金の話 貯金ゼロから「貯め体質」』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『元証券ウーマンの一生使えるお金の話 貯金ゼロから「貯め体質」』の要約と感想
まずは本書の要約から。
著者はフルタイムで働く2児のワーキングマザーである。
かつて証券会社に勤めていた経験を持つ。
お金を貯めるには、短期、中期、長期という3つのスパンで考え、行動しなければならない。
優先順位は、短期、中期、長期の順だ。
誰でも貯金ができるようになる方法から、投資による資産の増やし方まで解説する。
以上がおもな内容です。
タイトルにあるように、貯金ゼロの人間が本書を読んで「貯め体質」になれるのかどうかは疑問です。
アルコールに弱い体質、食べても太りにくい体質などは存在しますが、「貯め体質」なるものは存在しません。
なぜなら、お金を貯められるかどうかは収入と支出、それから意思の問題であって、体質に左右されるようなものではないからです。
「私って貯め体質だから、どんどんお金貯まっちゃうんだよね」
という人が、あなたの身近にいるでしょうか。
いないはずです。
綺麗事に惑わされない
「貯め体質」などという甘美な響きに惑わされてはいけません。
貯め体質になればストレスなくお金が増えていくよ、と著者は述べていますが、そんなものは幻想です。
というのも、お金が貯まるかどうかは、
- 収支
- 意思
これらで決まるものであって、体質とは無関係だからです。
結局のところ、マインドを変えて行動を変えなければ、お金は貯められません。
たとえば著者は、変動費の出費を抑えるために、予算を決めるよう勧めていました。
変動費(食費や娯楽費など月によって額が変わる費用) にたいして、
- 削る
- 節約する
とは考えず、予算内に収めながら今まで通りの豊かな生活をするにはどうするか考えると楽しいよ、と著者はアドバイスしていました。
がしかし、予算におさめる工夫をするのが楽しいかどうかは人によります。
たとえるなら、DIYを好きな人がいるいっぽうで、面倒に感じる人がいるようなものです。
全員が全員、自分の手で棚を作りたいわけではありません。
変動費を削ったり節約したりしていることには変わりないので、 予算内に収めようとしてストレスを感じる人もいるでしょう。
これでは「ストレスを感じない貯め体質」の定義から外れてしまいます。
そもそも、
- 出費を抑える
- 幸福を感じる
これら2つを両立させようとしているところに、無理があるのではないでしょうか。
すなわち、キレイゴトだ、ということです。
生来のドケチでもない限り貯金に喜びを覚えたりはせず、節約にある程度の我慢やストレスが生じるのは仕方ないといえます。
本書で気になった2つの点
本書には、気になる点が2つありました。
- 車両保険の必要性
- 投資のススメ
これらについて順にご説明します。
まず、著者は「車両保険は不要だ」と断言していましたが、これは不正確です。
車両保険に加入しなくて良い理由として、
「車両保険を使って車を修理すると等級が下がって高くつく。修理代は実費のほうがお得だ」
と、さぶ氏は述べていました。
ボディについた擦り傷程度なら、そうかもしれません。
では、運転ミスで単独事故を起こし、クルマが全損してしまった場合はどうでしょう。
車両保険に入っていれば契約に従って保険金が出ますが、車両保険に入っていなければ、ただ廃車になっておしまいです。
全損事故のリスクを無視し、「車両保険は損だよ」と断言する著者が書いた本を、私たちは信用して良いのでしょうか。
答えはノーです。信用に値しません。
それから著者は「元証券ウーマン」っぷりを発揮し、投資をバンバン勧めてきます。
タイトルに一言「投資」と入れておかなかったせいで、読者は混乱必至です。
投資商品を買う際には、対面営業型の大手証券会社を利用すると良いそうです。
というのも、ネット証券では買えない「プレミアム商品(社債のこと)」が、大手証券会社では買えるから、だと著者はいいます。
手数料の安さでは、人件費を抑えられる「ネット証券」の勝ちです。
プレミアム商品をエサに読者を対面営業型の大手証券会社(手数料が高い)へと誘導しているのは、「元証券ウーマン」として本を出せた恩返しのつもり、なのかもしれません。
まとめ
ほとんど何も印象に残らない本でした。
なぜなら、貯金から投資まで、本書が幅いテーマを扱っているからです。
節約術なら節約術で1冊の本になりますし、投資術なら投資術で、これまた1冊の本になります。
両者をガッチャンコしてある本書は、それぞれの内容が薄く、結局なにをしたら良いのかが分かりませんでした。
- 格安スマホへ切り替え
- ふるさと納税の活用法
- クレジットカードは3〜4枚必要
- モニターで外食や日用品をゲット
- ポイントを二重取り、三重取りする方法
など、著者が知っていることをぜんぶ詰め込んだような一冊です。
たとえるなら、冷蔵庫にあった食材をぜんぶ使って作った料理のようなもので、本書はゴチャゴチャとっ散らかっています。
その「ゴチャゴチャしている情報」も、どこまで信じて良いのかは怪しいものです。
なぜなら、車両保険は不要だ、と言い切ってしまう著者が書いた本だからです。
いかなるケースでも加入者が損をするなら、そもそも車両保険が存在しているわけがありません。
そんなものは保険でもなんでもなく、ただの詐欺です。
以上、さぶ著『元証券ウーマンの一生使えるお金の話 貯金ゼロから「貯め体質」』の要約と感想でした。
結論。「元証券ウーマン」の肩書きで出版してひと稼ぎ。ネット証券がスタンダードの今、証券会社への誘導もバッチリ。だって対面営業型の大手証券会社に勤めていたおかげで本書を出せたんだから。車両保険はよく調べもせず、思い込みで書いちゃう。ほかの情報の信憑性は推して知るべし。
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