運転支援システム・アイサイトを進化させ、スバルは、アイサイトXを新たに開発しました。
アイサイトXは2020年発売の新型レヴォーグ(2代目)から搭載され始めています。
- GT EX
- GT-H EX
- STI Sport EX
このように、グレード名にEXがついている新型レヴォーグはアイサイトXを、EX無しのレヴォーグは通常のアイサイトを、それぞれ標準装備しています。
ところで、アイサイトとアイサイトXは具体的にどんな違いがあるのでしょう。
アイサイトXには、追加費用を払ってまで装備するだけの価値があるのでしょうか。
この記事では、
- 通常のアイサイトとの違い
- なぜ受注の9割がアイサイトX搭載車なのか
など、「アイサイトXの機能と必要性」についてわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
アイサイトXの機能と必要性
通常のアイサイトを搭載している新型レヴォーグGTにたいして、アイサイトXを搭載しているレヴォーグGT EXは、車両価格が38万5千円高となっています。
食事でたとえるなら、うなぎ屋でうな重を頼んだときに、プラス150円を支払ってセットの味噌汁を肝吸に変える(豪華にする)ようなイメージです。
受注の9割以上がアイサイトX
38万5千円のコストが追加でかかるアイサイトXは「高すぎる」ように感じられますが、事実、新型レヴォーグ受注の9割以上を「アイサイトX搭載グレード(EX)」が占めているといいます。
ただしここにはカラクリがあって、みんながアイサイトXに40万円弱の価値を見出しているわけではありません。
なぜなら、アイサイトXではない(EXがついていない)グレードは、ナビ・オーディオレス仕様になっているからです。
いっぽうで、EXはナビ・オーディオが標準装備されています。
つまり38万5千円の価格差は、アイサイトXかどうかだけの問題ではない、ということです。
ナビやオーディオも含めた金額の差です。
EXではない標準グレードを検討していたオーナーも、ナビ・オーディレスと知り、
「オプションで30万円払ってふつうのカーナビを取り付けるんだったら、38万円払ってEXにしよう」
などと考えるのでしょう。
スバルとしては、
- アイサイト
- アイサイトX
両者の価格差を曖昧にすることで、アイサイトX搭載車の売上を伸ばし、「スバルの次世代技術が売れている」と世間にアピールしたい魂胆なのかもしれません。
通常盤アイサイトにできること
「X」がついていない通常のアイサイトには、どんな機能が備わっているのでしょう。
アイサイトの運転支援機能を以下にまとめました。
- プリクラッシュブレーキ
- 前側方プリクラッシュブレーキ
- 緊急時プリクラッシュステアリング
- 後退時ブレーキアシスト
- AT誤発進抑制制御
- AT誤後進抑制制御
- ツーリングアシスト
- 全車速追従機能付きクルーズコントロール
- 定速クルーズコントロール
- 車線逸脱&ふらつき警報
- 車線逸脱抑制
- 先行車発進お知らせ機能
- 青信号発進お知らせ機能
プリクラッシュブレーキというのは、「ぶつからないように自動ブレーキをかける機能」のことです。
歩行者を轢きそうになったり、前方車に追突しそうになったとき、危険を察知してクルマがブレーキを作動させるわけです。
これらすべてが備わっている標準のアイサイト(Xでない)があれば、運転のサポートに関しては必要十分だといえます。
アイサイトXの違い
ではアイサイトXは、通常のアイサイトといったいなにが違うのでしょうか。
アイサイトXはアイサイトの進化版ですので、当然ながら、上でご紹介したアイサイトの標準機能をすべて備えています。
くわえてアイサイトXは、
- 渋滞時ハンズオフアシスト
- 渋滞時発進アシスト
- カーブ前速度制御
- 料金所前速度制御
- アクティブレーンチェンジアシスト
- ドライバー異常対応システム
これらの機能を搭載しています。
すべての詳細とその必要性を見ていきましょう。
渋滞時ハンズオフアシスト・渋滞時発進アシスト
高速道路など、ツーリングアシストで前の車に追従して走っている最中に、渋滞にハマったと想定してください。
アイサイトではステアリングを握りつづけている必要がありましたが、アイサイトXなら、ステアリングから手を離しても問題ありません。
手放しでも渋滞に対応してくれる(ノロノロ進んでくれる)のが、ハンズオフアシストです。
それから通常のアイサイトは渋滞時、短時間の停車に限って再発進を行なってくれます。
ただしほんとうに「短時間」ですので、基本的には、再スタートに際してボタンやアクセル操作が必要です。
いっぽうでアイサイトXは、渋滞がノロノロと動き出したら、前につづいて勝手に発進してくれます。
これがアイサイトXの渋滞時発進アシストです。
渋滞時に使えるこれらの機能により、ストップアンドゴーの疲労やストレスを解消してくれるのが「アイサイトX」の特徴です。
渋滞とは無縁の地域に住んでいるのであれば、こうしたアシスト機能はほとんど出番がないといえます。
渋滞にハマって疲れる自分、38万5千円ぶんを稼ぐために残業して疲れる自分をそれぞれ想像してみてください。
年に数回味わうかどうかの「渋滞による疲労」のほうが、仕事による疲労よりもマシではないでしょうか。
なぜなら渋滞に巻き込まれても、
- 上司
- 同僚
- 取引先
といった人間関係のストレスとは無縁だからです。
カーブ前速度制御
アイサイトのツーリングアシストで走行中、大きく曲がっているカーブでは、途中でレーンキープがオフになってしまうことがあります。
急カーブはアイサイトにとって「難しい」ということです。
そこでアイサイトXは、3Dマップを活用し、カーブに沿って曲がれる速度にまで前もってクルマを減速させます。
結果、レーンキープを維持したままコーナーを曲がりきれるわけです。
ただし、カーブ前速度制御を行うためには、GPS等による位置情報が欠かせません。
ゆえに、トンネル内など車の位置をとらえにくい場所では使用できないこともあります。
ここに、トンネル内を走行中にドライバーがうっかりしていて、レーンキープが解除されてもすぐ対応できず、大惨事につながるリスクが潜んでいます。
そもそもカーブなど、自分の足でブレーキを踏んで曲がれば済む話で、3Dマップなど必要ありません。
ここまで運転支援システムに頼る人物は、いったいどれだけ車を運転したくないのでしょうか。
もはや運転アレルギーです。
そんなにも車の運転が面倒であれば、
- 誰かに運転してもらう
- 公共交通機関で移動する
といった方法をとるべきです。
料金所前速度制御
通常のアイサイトでは、ドライバー自らが減速して料金所を通過し、ふたたびツーリングアシストをオンにする必要があります。
いっぽうでアイサイトXは、料金所の前で減速してくれます。
ドライバーはハンドル操作だけに集中できて、ツーリングアシストの再セットは不要です(ブレーキを踏まないので解除されない)。
ツーリングアシストを使った状態で高速道路などの料金所をしばしば通るドライバーには、ありがたい機能でしょう。
ただし、そんなドライバーが世の中にどれほど存在するのかは不明です。
アクティブレーンチェンジアシスト
これまたツーリングアシスト作動時に、一定の条件下で、ウインカーを出すだけで車線変更を行ってくれる機能です。
もし後方から来ている車とぶつかる危険があれば、アイサイトXの判断により、レーンチェンジはキャンセルされます。
……いったいどこの何を面倒くさがっているのでしょう。
車線変更など、ウインカーを出し、ステアイングを切れば完了します。
こんな手間すら惜しむようなドライバーは、そもそも外出などせず、自宅でゴロゴロしているのが正解です。
ドライバー異常対応システム
アイサイトXの高度運転支援中(限定的)、ドライバーが意識を失った場合などに作動するシステムです。
まず、ドライバーの視線が前方から外れつづけると、ハンズオンを警告します。
「ステアリングを握れ」というクルマからの合図です。
ちなみに車内には赤外線カメラがついており、ドライバーの視線を監視しています。
- 居眠り
- わき見運転
などが生じた際に警告するこの機能を「ドライバーモニタリングシステム」といいます。
ハンズオンの警告にドライバーが反応しない場合、アイサイトXは自動車のハザードを点滅させ、クラクションを鳴らし、周囲に非常事態であることを知らせます。
それから減速してクルマを停止させ、電動パーキングブレーキを作動します。
これにより、ドライバーの足がアクセルペダルに当たっても車が前進しないようにするわけです。
ただしこの「ドライバー異常対応システム」が作動するのはアイサイトXを使ったクルージング中だけですので、シチュエーションはかなり限定的です。
たとえば、自宅を出てすぐ心筋梗塞で意識を失っても、アイサイトXは助けてくれません。
ドライバー異常対応システムで助かるのは、宝くじに当たるくらい奇跡的なことだといっていいでしょう。
くわえて、
- ハザードを点灯
- クラクションを鳴らす
といった演出は、まるでテーマパークのパレードカーのようにド派手かつ賑やかで、恥ずかしいといえます。
当然ながら、
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
などでドライバーが急死した場合、走行中の車がぶつかっても、アイサイトXによりぶつからずに停車しても、本人は助かりません。
「死亡」という結末はおなじです。
もしアイサイトXを搭載していない車で脳梗塞を発症したら、ドライバーは、ハリウッド映画さながらのクラッシュで最期を遂げます。
いっぽうでドライバー異常対応システムが発動した場合、脳梗塞に襲われたドライバーは、パレードカーのようにピカピカした車内で逝くことになります。
どうせ死ぬわけで、どちらも大差ありません。
ドライバー異常対応システムは、大勢の命を預かってる「高速バス」などに欲しい機能です。
まとめ
アイサイトXの機能と必要性をお伝えしてきました。
一言でいえば、アイサイトXは不要です。
なぜなら、アイサイトXが作動する前提である「ツーリングアシスト」は、一般道で使えないからです。
事実、スバルのウェブサイトには「一般道では使用しないでください」と明記されています。
ゆえにアイサイトXは、高速道路でしか機能を発揮できません。
毎日のように高速道路を走り、毎日のように途中で渋滞にハマっている人、あるいは持病があり、ツーリングアシストでの走行中に急死するリスクが高い人以外にはまったく必要ない機能、それがアイサイトXです。
以上、アイサイトXの機能と必要性についてでした。
結論。アイサイトXは不要。標準装備されている通常のアイサイトで十分(つまりEXがついていないグレード)。ただし、ナビ・オーディオレスなので、安いナビをつける、スマホのナビアプリを使うなど、工夫は必要。
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