この記事では、羽田圭介著『5時過ぎランチ』を読んだ感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
なお、ネタバレはいっさいありません。
『5時過ぎランチ』の感想
小説『5時過ぎランチ』は羽田圭介による短編(中編?)集であり、異なる3つの物語が収録されています。
すべてに共通しているのは「主人公がランチをとるのが夜になってしまう」ということ。
それぞれ仕事が忙しいため、昼食をとっているヒマがないのです。
車の整備士だったり、殺し屋だったり、週刊誌の記者だったりと、就いている仕事はさまざま。
けっして「遅すぎるランチをとる様子を描いた物語」ではありません。
ほのぼのとした話ではなく、『5時過ぎランチ』ではさまざまな出来事が起こります。
いつにも増して説明が多い?
羽田圭介の小説がもつ特徴の一つとして、説明文が多いことが挙げられます。
『5時過ぎランチ』ではとくに説明文の多さを感じましたね。
羽田圭介節が炸裂しまくっていました。
車の整備士が主人公の話など、整備の事情や車のあれこれについて「これでもか!」というくらい細かい説明がなされているのです。
取材したことをすべて出し切りたいのか、あるいは読者に誤解する隙を与えたくないのか。
著者の意図はわかりませんが、とにかく説明が多く感じました。
私は好きです。
が、読者によっては「物語が進まないからイライラする」と感じる人もいるでしょう。
地味な印象
『5時過ぎランチ』に収録されている3つの物語からは、どれも地味な印象を受けました。
面白いか面白くないかでいえば「面白い」のですが、かといってめちゃくちゃ面白いわけでもない。
そんな感じです。
もし羽田圭介の作品を初めて読むのであれば、本作はおすすめしません。
初めての方には『スクラップ・アンド・ビルド』のほうがおすすめです。
小麦アレルギーを知れる
本作には小麦アレルギーの人物が登場します。
で、羽田圭介らしい細かい説明がなされているので、読み終えたときには小麦アレルギーについて少しだけ詳しくなれます。
小麦アレルギーの人は「小麦を食べなければ大丈夫」というわけでもないのですね。
空気中に漂っているものを吸うのもマズいのだとか。勉強になりました。
まぁ、小麦アレルギーについて知りたかったら専門書を読んだほうが早いですし確実ですが、小説を楽しんでいてついでに「詳しく」なれるのが、お得な感じがしていいのです。
まとめ
羽田圭介著『5時過ぎランチ』を読んだ感想について書いてきました。
彼の読者であれば読んで損はありません。私は(それなりに)楽しめました。
が、それほど急いで本作を読む必要もないといえます。
好き嫌いは別れますが、『メタモルフォシス』を先に読むのもいいでしょう。
かなりインパクトのある作品です。
先述のとおり、『5時過ぎランチ』には激務をこなす人たちが登場します。
ですが、本作を読むのはおそらく「時間に余裕のある」人々でしょう。少なくとも、本を読む時間は確保できているわけですよね。
そうした意味では「自分と重ね合わせて読むことはできない」のかもしれません。
毎日12時きっかりにランチをとっている私にとっては他人事でした。
いっぽうで、5時過ぎにランチをとっている人は読書をする時間などないでしょう。
……誰からも深い共感を得られそうにないですね。
以上、『5時過ぎランチ』を読んだ感想でした。