生きていること自体がエゴ。
そう考えているのが、菜食主義者なのだとか。
自分が生きるために他の動物を殺す。
たしかに自己中心的な考え方なのかもしれません。
となるとステーキや寿司が好きな私やあなたは、エゴイストなのでしょうか。
この記事では、齋藤孝著『「自己中」の正体 自分の"エゴ"と折り合いをつける生き方とは!?』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『「自己中」の正体 自分の"エゴ"と折り合いをつける生き方とは!?』の要約と感想
まずは本書の要約から。
自己中(エゴ)の根本は、他人より自分の利益を優先させること。
だが、各人が自分の利益だけを優先させると社会は存続できない。
エゴには良い面も悪い面もある。
すべてを削り取ろうとせず、持って生まれた個性として育てていくことが大事。
以上がおもな内容です。
歴史や経済など、あらゆる側面からエゴについて考察しています。
エゴをテーマとした研究論文のようでした。
エゴイズムは種の保存を脅かす
著者は、徹底したエゴイズムが種の保存を脅かすリスクについて言及しています。
なぜなら究極のエゴイストは、自分ひとりの生活を一生貫き通そうとするから。
子育ての面倒くささから逃れようとするわけです。
現代人にはこのように「種を残したい」という欲求を凌駕して、「自分が一生を滞りなく過ごせれば良い」という発想の人が増えている、と。
自分が良ければそれで良いという考え方です。
どんな状況でも種の保存を優先させるのが生物の常ですが、人間にはそれが当てはまらなくなってきているのかもしれません。
本能をエゴが超えてしまったのだとしたら、空恐ろしいですね。
少子化と高齢者のエゴイズム
上記のエゴが生まれる背景には、経済的困窮があります。
つまり、子どもを育てるだけの金銭的余裕がないのだ、と。
子育てにかかる費用、子育てをするために仕事を休んだことによる収入減など、子供を育てるにはお金がかかりますよね。
農業中心だった時代のように、「子供がそのまま労働力になる」というわけでもありません。
お金が一方的に出ていくのみです。
税金の再分配
こうした経済面の課題について著者は、高齢者のエゴが関係していると指摘します。
高齢者のエゴイズムが、税金の再分配を重点的に若い世代に注ぎこむことを妨げている。
高齢者の福祉にかかっている予算部分を出産、育児へ徹底的に回せば、少子化はあっという間に食い止められるはず。
これが齋藤氏の主張です。
つまり、高齢者のエゴが出産や育児への分配を制限している。
そのため若者世代は子育てを考えにくくなり、エゴを優先させるようになる。
少子化が進む、と。
いま、日本はこのようなスパイラルに入っているのかもしれません。
各人がエゴを優先させると、社会が成り立たなくなる。
まさにその良い例ですね。
私たちは芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で示されていた教訓を思い出すべきです。
自分だけ助かろうとすれば、誰も助からないという、あの教訓を。
まとめ
私たちが持っているエゴに焦点を当てた、興味深い本でした。
エゴが蔓延すると、欲しいものを暴力で奪うようになります。
これでは安心して暮らせないため、法律を制定し、エゴをコントロールしています。
法律で押さえつけなければどうにもならないほど、人間のエゴは強力なんですね。
"自己中なヤツ"というのは、「居酒屋で自分用のチャーハンを頼んじゃう人」だけを指すわけではありません。
焼き鳥をムシャムシャ頬張っている時点で、私もあなたも、エゴが炸裂しているのです。
本質的なエゴについて考えてみませんか?
以上、齋藤孝著『「自己中」の正体 自分の"エゴ"と折り合いをつける生き方とは!?』の要約と感想でした。