井原西鶴は、江戸時代に活躍した作家です。
彼が記した『日本永代蔵』や『好色一代男』が現代にも通用する世渡り指南書だということを、ご存知でしたか?
この記事では、齋藤孝著『最強の世渡り指南書 井原西鶴に学ぶ「金」と「色」』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『最強の世渡り指南書 井原西鶴に学ぶ「金」と「色」』の要約と感想
まずは本書の要約から。
井原西鶴の作品を貫いているのは「才覚」の必要性である。
才覚とは、野性的なパワーと工夫する能力を足し合わせたもののことをいう。
才能は先天的なものだが、才覚は努力によって伸ばせる能力だ。
成功、交際、結婚など、世の中を生き抜くのに欠かせない才覚の中身について、井原西鶴の作品から学びとる。
以上がおもな内容です。
本書は、井原西鶴の作品や江戸時代について知りつつ、成功するヒントを学べる自己啓発書だといえます。
「江戸時代」という、他者とは違った視点をインプットしたい方に本書はおすすめです。
『日本永代蔵』と『好色一代男』
井原西鶴が残した『日本永代蔵』や『好色一代男』といった作品を引用しつつ、才覚の伸ばし方を解説しているのが本書です。
ところで、『日本永代蔵』や『好色一代男』の内容はご存知でしょうか?
中学や高校の日本史で習い、作品名だけは暗記している方が多いかもしれません。
『日本永代蔵』は、さまざまな金持ちが登場し、彼らが財を成した経緯を紹介する話です。
『好色一代男』は、後継を残さないと決め、色だけを好んだ男の物語です。
井原西鶴は、人間が持っている「色欲」と「金銭欲」という根幹的な欲に着目することで、人が世の中を生き抜くにあたって必要な才覚を追求した作家なのだ、と著者は述べていました。
厳しい江戸時代から学べること
江戸時代は、いま以上に厳しい時代だったといいます。
どれほど生活が困窮したとしても、「生活保護」などというセーフティネットは存在しませんでした。
ビジネスに失敗してしまったら、店が潰れようが、莫大な借金を抱えようが、すべて自己責任だったといいます。
もちろん、会社更生法や自己破産といった救済の道もありません。
何をやってもダメであれば、江戸の人間は文字どおり「野垂れ死ぬ」しかなかったそうです。
ビジネスで成功したとしても、現代のように特許や著作権で保護されたりはしません。
類似商売が出てしまい、町人たちは過酷な競争に晒されていたといいます。
こうした厳しい時代に生きていたからこそ、江戸の人々は野生の勘を研ぎ澄まし、工夫を重ねて「才覚」を磨いていたのだ、と著者は述べていました。
井原西鶴の作品を読んでこうしたヒントを学ぶのは、私たちにとってハードルが高いかもしれません。
ですが、著者のわかりやすい解説(時代背景の説明や現代でのたとえ)が載っている本書であれば、西鶴の考えや江戸庶民の暮らしぶりについて知ることができます。
むしろ、本書以外で私たちが井原西鶴の『日本永代蔵』や『好色一代男』について知る機会など、あるのでしょうか。
まとめ
色、金、倫理はどれも、人間が生きていく上で必要なものであると齋藤氏はいいます。
ただし、どれか1つに特化してはダメで、これらを三位一体の柱とし、バランスよく人生に取り入れていくべきだ、というのが著者の主張です。
あなたのバランスはどうでしょうか。
色だけに走る人、金ばかり追い求める人、倫理に欠ける人など、さまざま人がいるはずです。
これら3つのバランスを取りながら、生き抜くために必要な「才覚」を伸ばしませんか?
そのヒントが本書に詰まっています。
以上、齋藤孝著『最強の世渡り指南書 井原西鶴に学ぶ「金」と「色」』の要約と感想でした。
結論。江戸の人々のバイタリティを学べる。現代人の生温さを痛感させてくれる本。
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