およそ100人に1人が吃音だといわれていますが、吃音に対応できる病院は多くありません。
病院で使用しているテキストに加筆し、ひとりで発声や発音の練習をできるようにしたものが本書です。
吃音の専門外来へ足を運ばなくとも、自宅で吃音の改善に取り組めるのが本書のメリットだといえます。
この記事では、安田菜穂、吉澤健太郎著『自分で試す 吃音の発声・発音練習帳』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『自分で試す 吃音の発声・発音練習帳』の要約と感想
まずは本書の要約から。
本書は吃音を「治す」ことではなく、より楽な話し方を習得することを目的にしている。
載っているのは吃音を克服するための発声練習と、気をつけるべきポイント、発音のコツなど。
有声音と無声音の違い、舌や唇の動き、どもりやすい言葉についてなど、発声や発音の基本から学ぶことができる。
挨拶、固有名詞、ドライブスルーなど、シチュエーション別の練習方法やコツは、吃音に悩む読者にとって参考になるだろう。
後半は吃音についてのQ&Aが掲載されており、吃音について理解を深めるのに役立つ。
以上がおもな内容です。
吃音に悩んでいる方にとって、本書に載っているトレーニングやアドバイスは助けになるかもしれません。
発声や発音のコツが解説されている
大前提として、本書を読んでも吃音を「治す」ことはできません。
なぜなら吃音になる原因がいまだわかっておらず、治療法が見つかっていないからです。
そこで本書は吃音を治すのではなく、読者が少しでも楽な話し方を身につけられることを目的としています。
おなじ言葉を繰りかえしてしまう(どもってしまう)連発性吃音について、本書はおもに書かれていました。
ですが、音の出だしを小さくする軟起法など、難発性吃音(ブロック)に役立つアドバイスも掲載されており、どの種類の吃音であっても本書は参考になるといえそうです。
自分で練習できるメリット
本書のメリットは「自分ひとりで発声や発音の練習ができること」だといえるでしょう。
というのも、吃音に悩む人は、人と話すことに抵抗を抱いているケースが少なくないからです。
- 医師と話すのもしんどい
- 病院に電話で予約するのが無理
- 受付で症状を伝えられるか不安
など、他者とのコミュニケーションを恐れていることも多いため、吃音に悩む人にとって、医療機関の受診は容易ではありません。
くわえて地方に住んでいると、そもそも吃音を専門に診てくれる病院やクリニックが存在しないのが現状です。
吃音外来がないため、仕方なくふつうの耳鼻科を受診する、なんてことも地方では珍しくありません。
ただし医師に吃音の知識が足りず、じゅうぶんな対応をしてもらえない可能性が高い。
ところが本書ならどうでしょう。
書店あるいはネットで購入するだけで手に入り、いつでもどこでも発声練習ができます。
どもっている姿を誰かに見られることもありません。
第一声が出ず、必死にもがいている様子を晒す心配も不要です。
誰の目も気にせず、自分が納得するまで自宅でトレーニングできるのが、本書の強みだといえるでしょう。
まとめ
本書に載っているトレーニングはどれも、即効性のあるものではありません。
繰りかえし練習することが重要です。
もしあなたが吃音にひとりで悩み、誰にも相談できずにいたなら、本書を読んでトレーニングを試す価値は大いにあるはずです。
なぜなら吃音について知り、発声や発音のコツを身につけることができるからです。
吃音は治せないのが現状ですが、だからといって吃音に絶望することはありません。
本書には、吃音による話しづらさを改善するためのポイントが載っています。
今よりも楽に話せるようになりたい方にとって、本書は役に立つのではないでしょうか。
以上、安田菜穂、吉澤健太郎著『自分で試す 吃音の発声・発音練習帳』の要約と感想でした。
結論。吃音に悩んでいるなら読んで損はない。連発、伸発、難発どのタイプの吃音でも参考になるだろう。
難発性吃音の症状に悩む方にとって、こちらの記事がなにか参考になるかもしれません。