猫っ毛とは、通常(日本人だとだいたい直径0.07〜0.08mm)よりも細い髪のことをいいます。
一般的な髪の太さを「大根」だとするなら、猫っ毛は「ニンジン」です。
まるでネコの体毛のように細くて柔らかいのが、猫っ毛の特徴です。
では、生まれつき髪の毛が細かったら(つまり猫っ毛だったら)、薄毛になるのは時間の問題なのでしょうか。
それとも、体質的に猫っ毛でありながら、ハゲていないオジサンはこの世に存在するのでしょうか。
この記事では、
- 猫っ毛はAGAになりやすいのか
- ハゲるかどうかを決める決定的要因
など、「猫っ毛と薄毛の関係性」についてわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
猫っ毛とハゲは関係ない
猫っ毛とハゲは、なんら関係ありません。
生まれつき猫っ毛だからといって、将来120%ハゲると確定しているわけではない、ということです。
たとえるなら、経営者の息子に生まれたからといって、天性の経営センスに恵まれているわけではないのとおなじです。
実際、世の中には、ビジネスの才能がない2世経営者がゴロゴロいますし、ハゲる気配がない猫っ毛オジサンもゴロゴロいます。
それにたいして、20代のころは針金のような剛毛だったにも関わらず、30〜40代になったとたん、タンポポの綿毛が飛んでいくようにフワッと髪が薄くなる人もいます。
では、ハゲるか否かは何によって決まるのでしょうか。
猫っ毛を含めた「生まれつきの髪質」でないとしたら、
- 食事
- 運動
- 睡眠
- ストレス
といった生活習慣が、薄毛に深く関わっているのでしょうか。
薄毛代表:男性型脱毛症(AGA)
高級車といえば、メルセデス・ベンツです。
恐ろしい病気といえば、がんです。
おなじように、薄毛といえば男性型脱毛症(AGA)です。
事実、一般的な「薄毛」はほとんどこの男性型脱毛症のことをさしています(ほかには円形脱毛症、牽引性脱毛症など。ただし少数)。
毛の本数が減るのではなく、成長サイクルが乱れることで、頭髪が細くて短い毛ばかりになるのが男性型脱毛症の特徴です。
AGAになると、
- 生え際が後退する
- 頭頂部が薄くなる
といった、よくあるスタンダードなハゲ方をします。
円形脱毛症と違い、狭い範囲に限って、スポットライトが当たったかのように髪が薄くなったりはしません。
AGAでは、もっと大規模に、デカいスケールでハゲが進行します。
男性型脱毛症(AGA)を発症すると、新しく生えてくる髪が細くなります。
その「細さ」は、猫っ毛の比ではありません。
猫っ毛の細さが「ニンジン」なら、AGAで生えてくる髪の細さは「ニラ」です。
顔に生えている「うぶ毛」のようなものだといえます。
ですので、猫っ毛に生まれた運命を恨むのは、お門違いです。
猫っ毛とAGAは、ちょうどゴリラと消しゴムくらい別物で、なんの関係もありません。
AGAになるかどうかは体質次第
世の中には、生まれつき猫っ毛で、周りから「あと5年もすればハゲる」とからかわれ続け、60歳を迎えた男性がいます。
髪はフサフサのまま、です。
いっぽうで、若いころはチクチクと硬い剛毛だったにも関わらず、30代で一転してハゲる男性もいます。
たとえるなら、二審で一転して有罪しかも死刑判決、みたいな驚きです。
この差はいったいなんなのでしょう。
じつは、男性型脱毛症(AGA)になるかどうか、つまり私たちがハゲるかどうかは、すべて体質にかかっています。
遺伝による体質です。
食事でも、運動でも、喫煙でも、飲酒でも、愛用しているシャンプーの値段でもなく、先天的な体質が、ハゲるかどうかを左右しています。
この「体質」についてわかりやすく解説します。
テストステロンというホルモンをご存知でしょうか。
テストステロンは、通称「男性ホルモン」として知られています。
この男性ホルモン自体がハゲの原因になるわけではありません。
5α-リダクターゼという還元酵素の働きによって、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)という悪玉ホルモンに変わってからが、問題です。
DHTにたいする、
- 毛乳頭細胞
- 毛母細胞
これら頭皮にある細胞の感受性しだいで、薄毛になるか否かが決まります。
DHTに敏感に反応する体質ならハゲるし、鈍感ならハゲない、ということです。
どちらなのかは遺伝によって受け継いだ体質がカギを握っていて、運しだいだといえるでしょう。
ちょうど、コチョコチョが効く人、くすぐられても平気な人がいるようなものです。
敏感ならアウト、ハゲ・薄毛コース確定です。
ちなみに、父親が薄毛だからといって、その子も「薄毛になる」というほど単純な話ではありません。
遺伝子、DNAはもっともっと複雑です。
男性型脱毛症を恐れる必要はない
ハゲるかどうかは体質しだいで、毎日のジョギング、就寝前のストレッチ、頭皮マッサージ、サラダ大好きうんぬんは、薄毛にほとんど関係ありません。
ハゲる人はハゲるし、ハゲない人はハゲない、これが現実です。
どの習慣のせいでもなく、体質のせいです。
生まれ持った体質こそが薄毛の犯人です。
もし運悪くAGAに当選してしまったら、絶望する前に、まず病院を訪ねましょう。
男性型脱毛症は、治療できます。
具体的には、
- ミノキシジル
- フィナステリド
という有効成分を含んだ治療薬を使って(頭皮に塗ったり、口から飲んだりして)、薄毛の進行をストップし、改善していきます。
ちなみにAGAの治療は、早ければ早いほど良いとされています。
頭がお月様のようにツルツルピカピカになってから病院へ行くよりは、「あれ?」と異変に気づいてすぐ受診したほうが効果的なのは、いうまでもありません。
火事なら"ボヤ"で済みます。
ちょうど、90歳で10億円の宝くじに当選するよりも、人生の早い段階、たとえば20代で10億円を手にしたほうが「良い」のとおなじです。
前髪の生え際、頭頂部を鏡で見てただならぬ違和感や恐怖を覚えたら、
- AGA専門クリニック
- 皮膚科
どちらか好きなほうを受診しましょう。
もし「気のせい、気のせい」と自分にいい聞かせて現実から目を背け、治療を受けずに過ごしていたら、「猫っ毛」なんてかわいいネーミングの範疇に収まらないほど髪が痩せ細ってしまいます。
- うぶげ
- わたげ
- ハゲ
こうなる前に、つまり"無理ゲー"にならないうちに、現代医療の手を借りるべきです。
以上、猫っ毛と薄毛(禿げ)の関係性についてでした。
結論。猫っ毛だからといって悲観的になることはない。絶望することもないし、高級シャンプーを買うこともない。できることは、ただひとつ。ハゲない体質であってくれ、と祈るのみ。
【参考文献】
『Newton別冊 健康の科学知識』ニュートンプレス、2020年
『Newton別冊人体完全ガイド 改訂第2版』ニュートンプレス、2020年
小林一広『病はケから 老けない体と心の作り方』幻冬舎、2014年
伊藤和弘『男こそアンチエイジング』日経BP、2015年