ラジオでクリープハイプの『鬼』を流していた。曰く、「もうすぐ節分だから」とのことだ。なるほど。
レミオロメン『3月9日』
レミオロメンの『3月9日』という曲がある。日付を曲名にしてしまうあたり、白熱電球以来の大発明だと思う。
なぜなら、3月9日になると毎年レミオロメンの『3月9日』を思い出すから。いや、正直にいえば2月下旬から『3月9日』を意識し始めてしまう。
年に1度はかならず意識する。それが『3月9日』という曲名の秀逸さ。そして聴いてしまう私の単純さ。
クリスマスと桜は大混戦
『3月9日』にはライバルがいない。3月9日について歌っている曲が(たぶん)他にないから。ブルーオーシャンに浮かぶ唯一無二の存在だ。
一方で、クリスマスや桜は大混戦である。血で血を洗うレッドオーシャンの様相を呈している。
「クリスマスの定番ソングといえば?」の質問に対し、10人の回答がそろうことなどありえない(私はJUDY AND MARYの『クリスマス』)。
ライバルが多すぎるのだ。いまからここに新曲を投下したとしても、勝ち目はないだろう。
画期的なクリープハイプ『鬼』
4月といえばフジファブリックの『エイプリル』、エレファントカシマシの『四月の風』。
流れ星が見えそうな夜といえばフジファブリックの『星降る夜になったら』、スピッツの『流れ星』。
バレンタインデーにはフジファブリックの『Chocolate Panic』で、日曜の朝にはフジファブリックの『Cheese Burger』。
なにが言いたいのかというと、「もう歌うべきイベントが残されていない」ということだ。どんな季節、どんなイベントについて歌っても、誰かの曲と被ってしまう。完全なブルーオーシャンなど残っていない。
そんな諦めムードのなか颯爽と現れたのがそう、クリープハイプの『鬼』だった。
節分はブルーオーシャン
もし「節分」にライバルがいないと気づいたとしても、「節分」でかっこいい曲を作るのは難しいだろう。「節分」に深いメッセージを込めるのも難しそうだ。
「年の数だけ豆を食べような」とか「お友達に投げちゃいけないよ。豆は鬼に向かって投げるんだよ」とか、その程度の教訓を盛りこむのが精一杯だ。
だが、節分の主人公である「鬼」にフォーカスしたらどうだろう。これならクリープハイプ『鬼』のようなカッコイイ曲ができるし、「節分」について歌っていなくても、2月3日が近づくと各局がラジオで流し始める。
作詞・作曲を担当した尾崎世界観がここまで計算していたのかはわからないけれど、「いずれ節分のテーマソングになればいいひょー!」と考えていたとするならば、恐ろしい着眼点と発想力だと思う。
これから活躍するアーティストの活路
今回見てきたように、「AといえばB」のBを獲得できれば、多くの人に親しんでもらうことができ、知名度を上げるきっかけになる。
節分といえばクリープハイプ『鬼』、心配になったらクリープハイプ『大丈夫』、過労といえばクリープハイプの『チロルとポルノ』、ラブホテルといえばクリープハイプ『ラブホテル』のように。
ただ問題なのは、「AといえばB」のAがほとんど残っていないことだ。
どんなテーマであっても、どこかの歌手が歌っている。ただし、ラジオや百貨店で流れることを想定するのなら、やはりAは「季節」に関連しているほうがいい。使われやすいから。
そこで、新人アーティスト各位には次のテーマを贈呈したい。
- 大寒
- 冬至
- 夏至
- 大晦日
- 正月
たぶんこれらについて歌ったJ-POPはないだろうし、仮にあったとしてもたぶんダサいから大丈夫。今からでも追いついて、その座を奪うことが可能だ。
そうすればラジオで「えー。今日は大寒です。大寒といえばこの曲、『DAIKAN』です。それではお聴きください、どうぞ」となるだろう。
あるいはクリープハイプの『鬼』のように、具体的な対象について歌うのもいいだろう。
「アイスクリーム」をモチーフにした曲を作れば、「今日は夏至です。暑いですね。ではそんな暑さを吹き飛ばすナンバーです。『アイスクリーム垂らしちゃった』お聴きください」となる。
さりげなく夏至を獲得できるのだ。少なくとも直球勝負の『GESHI』よりはスマートなやり方だと思う。
「ねぇねぇ早く終わらせてねぇねぇずっと読ませないで」という読者の心の声が聞こえてきたので、これで終わりにする。冗長でごめんね、いつもありがとう。