ソフトクリームの大盛りを見たことがありますか?
たぶん、ほとんどの方は「ない」と思います。
牛丼にもラーメンにも大盛りがあるのに、ソフトクリームにはありません。
好きな人はたくさん食べたいはずなのに……。いったいなぜでしょう?
ソフトクリームの大盛りはなぜ売ってない?
ソフトクリームの大盛りをお目にかからないのには、大きくふたつの理由があります。
1. 食べるタイミングがないから
まずは、食べるタイミングがない、という消費者側の問題です。
じつはソフトクリームの大盛りを食べるタイミングって存在しないんです。
暑いとすぐに溶けてしまう
「暑い日にはたくさん食べたくなる」と感じる人もいるでしょう。
その気持ちはよくわかります。ただ、暑ければ暑いほどソフトクリームはすぐに溶けてしまいますよね。
気温が上がったぶんだけソフトクリームをたくさん食べたくなる。
でも、気温が上がったぶんだけソフトクリームは溶けやすくなる。
グラフで表すとこんな感じです。
もし気温が38℃もあるような猛暑日には、高さ50センチくらいのソフトクリームを食べたくなります。
でも、食べるよりも先に溶けてしまうでしょう。
涼しいときに大盛りは食べない
じゃあ涼しいときならいいんじゃないか。溶けにくいから。そう感じます。
でも、これもダメなんですね。
涼しいときには大盛りじゃなくていいからです。暑いときほど欲しないため、普通の量でじゅうぶんです。
もし冬にソフトクリームの大盛りを買ったとします。
溶けるのを心配して焦って食べる必要はありませんが、きっと途中で「もういらない」ってなります。
そして気温が低い上にカラダの芯まで冷えた結果、お腹を壊してしまうことでしょう。
暑い日にはすぐ溶ける。寒い日には適量でいい。つまり大盛りを食べるタイミングがない。
2. 巻くのが難しいから
ここまでは消費者側の問題を見てきました。
続いては売り手側の問題です。
ソフトクリームの大盛りとなると、通常のものよりも高く巻く必要が出てきます。これがけっこう難しいんですね。
(ふつうは3周巻くなどと決まっています)
ちょっとでも傾いていようものなら、お客が食べてる途中でドサッと落ちてしまうかもしれません。
つまり、ソフトクリームを高く巻くには技術が必要なわけです。
ベテラン販売員なら余裕でしょうが、新人アルバイトにとって大盛りは至難の技です。質にバラつきがあってはいけないため、技術的に難しい大盛りの提供はしていないのだと考えられます。
(先述のとおりニーズもありませんし)
近所で見つけたソフトクリームの大盛り
これだけいっておきながら、じつは私の家の近所には、ソフトクリームの大盛りを売っているお店があります。
せっかくなので実際に買ってみました。季節は5月。夜だったので気温は16度くらいでした。大盛りを欲しているといえば嘘になります。
店主はこの道60年くらいの大ベテランです。目の前で、軸がまったくブレていない見事な大盛りソフトを作ってくれました。
ソフトクリームを持ったまま100メートルを全力で走ったとしても落ちなさそうな、バツグンの安定感があります。
で、いざ実食。
半分まで食べ進めたところで後悔の念にボコボコにされますが、なんとか耐えます。
長くて重いソフトクリームを支えていたからか、コーンに近づくにつれ、どんどん食感がハードになっていきます。
押し固められてジェラートみたいになってるんです。もはやソフトさは微塵も感じられず、なにを食べているのかが曖昧になります。
もう要らない。意識が朦朧としながらもなんとか完食した私は、気がついたらトイレにいました。ソフトクリーム許容量を超えてしまったようです。
大量に食べるものではありませんね。みなさんもほどほどに。