この記事では、グレース宮田著『オスカー・ワイルドに学ぶ人生の教訓』を読んだ感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『オスカー・ワイルドに学ぶ人生の教訓』の感想
オスカー・ワイルドは『ドリアン・グレイの肖像』『幸福な王子』など有名な作品を残したアイルランド出身の作家です。
本書には、そんな彼の言葉が、文学博士であるグレース宮田氏の解説とともに掲載されています。
とにかく深い
「オスカー・ワイルド天才かよ!」というのが正直な感想です。
とにかく観察眼がすごい。
彼の言葉はどれも物事の本質を捉えていて、思わず「そうだよな」と納得させられてしまいます。
自分のことは愛せても知ることはできない、自分の書いた日記がいちばん面白い、値段を知っていて価値を知らない人ばかり、食事について真剣に考えない人は大嫌い、などなど。
私はほとんどの言葉を気に入りました。
彼の言葉は出典元および原文(英語)も掲載されているため、英文を読んで、自分なりに解釈することもできます。
本書のスタイル
本書は右側のページにオスカー・ワイルドの言葉、左側ページに著者解説というスタイルを採用しています。
この手の「名言集」にはよくある形式ですね。
ただし私は著者による解説が嫌いで、たいていは解説を読みません。
本人の言葉が知りたいのであって、著者の(個人的な)解釈が知りたいわけではないので。
ですが、本書はちがいます。
グレース宮田氏の言葉がとても含蓄に富んでいて、読み応えがあります。
時代背景やオスカー・ワイルドの性格を反映した解説が、理解をサポートしてくれました。
愚かなほうが幸せになれる?
たとえば本書には「この世の中は愚か者のほうが幸せになれる」という旨が書かれていました。
これだけを読んでも、「なんで?」とクエスチョンマークが残るだけで、オスカー・ワイルドの言わんとしていることはイマイチ理解できません。
「賢者のほうが成功して幸せになれそうだけど……」と思ってしまいます。
が、これは「愚か者は他人の真意に気づかないから幸せでいられる」という皮肉を込めたメッセージなんですね。
つまり自分がただ利用されているだけであること、嫌味をいわれていること、そうした理不尽な扱いに「気づかない」。
なぜなら愚かだから、というわけです。
もしも賢い人だったら
頭のキレる人は、どうしても他人の言動に敏感になってしまい、また本心が読めてしまいます。
「これはバカにされてるんだな」とか「そんなことを言うはずがない。裏があるな」とか。
たとえその推測が誤りであったとしても、頭のキレる人は「こう思っているに違いない」と推測し、そして(勝手に)嫌な気分になる。
そう考えてみると、「深読みしすぎない」ことは、幸福に生きるうえで欠かせない要素でありそうです。
なおオスカー・ワイルドは博識で賢い人物だったので、これは他者へむけた皮肉ですね。
「アンタらは気楽でいいよな」という。
まとめ
世の中に数多ある名言集に比べて、本書はなかり本質的で、的を射たことが書かれていると感じました。
「オスカー・ワイルドって誰?」「名前だけ聞いたことある」など、彼に詳しくない人でも楽しめますし、読んだらきっと彼の作品に興味を持ちます。
ぜひオスカー・ワイルドへの入り口として、本書を手にとってみてはいかがでしょう。
そのへんの自己啓発書を10冊読むよりも、よほど参考になります。
以上、グレース宮田著『オスカー・ワイルドに学ぶ人生の教訓』を読んだ感想でした。