心理学者による示唆に富んだエッセイ本です。
『こころの処方箋』というタイトルのとおり、本書を読めば、いまよりも気持ちを軽くできるかもしれません。
この記事では、河合隼雄著『こころの処方箋』の要約と感想をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
『こころの処方箋』の要約と感想
まずは本書の要約から。
心の問題というのはたいてい「急がば回れ」の解決法が得策である。
心に抱えたトラブルを解消したいなら、焦るべきではない。
強い人間になる方法、心のエネルギーを出し惜しむと損をする、 つねに100点を狙うべきでない理由など、健全なメンタルを保つためのアドバイスやヒントが詰まった一冊。
以上がおもな内容です。
生きづらさを感じている方にとって、本書は参考になるかもしれません。
臨床心理学のプロである著者から、「生きるのが楽になる考え方」を教わってみませんか?
示唆に富んだエッセイ本
本書は、心理学者によるエッセイ本です。
専門的な解説文が書かれている小難しい本などではありません。
あなたが大学生でも、社会人でも、主婦でも、本書は難なく読めることでしょう。
「君はこうすべきだ」とアドバイスを押しつけてくるのではなく、「私はこう思う」といった控えめな姿勢で読者に語りかけてくる点に、著者の優しさ、物腰の柔らかさを感じます。
たとえば、「一人だから自由で良い」などといって一人の楽しさを見せびらかして生きている人間は、偽物であることが多いと著者はいいます。
なぜなら、ほんとうに楽しいと感じている人間はもう少し静かだから、だそうです。
この意見は、SNSにも当てはまるのではないでしょうか。
SNSで幸せっぷりをアピールしている人は、たいてい偽物です。
心の底からほんとうに満足している人間は、わざわざ他者にむけて幸福を見せびらかしたりしません。
なぜなら、(ほんとうに幸せを感じていれば)自慢する必要がないからです。
あなたのまわりにも、独身の快適さをアピールしたり、贅沢な食事を自慢したりしている人間がいるのではないでしょうか。
それらを「偽物」だと思えたなら、心がグッと軽くなるはずです。
というのも、あなたが感じていた劣等感は錯覚に過ぎなかったと気づけるからです。
このような「こころが軽くなる気づき」を本書は与えてくれます。
心のエネルギーを出し惜しまない
人間には、
- 身体的エネルギー
- 心のエネルギー
これら2種類のエネルギーがあると考えると、物事を理解しやすくなるといいます。
例として著者は、イスに座る行為を挙げていました。
イスに1時間座るとしても、ひとりでボーッと座るのと、客の前で座っているのとでは、疲れ方がまったく違います。
後者のほうが緊張するため、心のエネルギーを消耗しやすい、ということです。
人間の心のエネルギーは多くの鉱脈のなかに埋れており、新しい鉱脈を掘り当てることで、これまでと異なるエネルギーが共有されるようになるといいます。
だからこそ「心のエネルギーを節約することばかり考えないほうが良い」と著者は述べていました。
なぜなら、心のエネルギーを出し惜しむと新たな鉱脈にたどり着けず、結果として損をすることが多いからです。
やや抽象的なアドバイスですが、「億劫がらずにあれこれチャレンジしてはどうか」と解釈して良いでしょう。
ビジネス書にはよく「お金というのは、使うほど自らに入ってくる。だから、お金が欲しければお金をどんどん使うことだ」といった旨のことが書かれています。
逆説的なこの行動が、心のエネルギーにも当てはまる、ということです。
まとめ
ところであなたは「心配や苦しみがひとつもない人」がこの世に存在すると思いますか?
著者は「いない」と断言しています。
すなわち、世の中のすべての人間が、何らかの悩みや苦しみを抱えて生きているわけです。
たとえお金持ちでも、イケメンでも、美女でも、まして8頭身でも関係ありません。
誰もが何らかの悩みを抱えています。
- 短足
- 足が臭い
- 口臭がキツい
- 肩こりが酷い
- 妻に不倫がバレた
- 夫の借金が発覚した
- 髪が薄くなってきた
- 毛穴の開きが気になる
- お金を失わないか不安
- 大腸でポリープが見つかった
- この先も事業を続ける自信がない
- ステージ2の胃がんだと宣告された
などです。
もし仮に悩みがない人間がいるとすれば、「周囲の人が困っていると考えて間違いない」と著者は述べていました。
つまり、悩みや苦しみがない人を想像し、羨むべきではないということです。
なぜなら、そんな人間は存在しないからです。
架空の人間と比較し、「自分は不幸だ」などと思いこむことはありません。
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以上、河合隼雄著『こころの処方箋』の要約と感想でした。
結論。友人や家族に悩みを話しても、気休めの言葉か、的外れなアドバイスしかもらえないだろう。なぜなら、あなたの友人や家族は心理学のプロではないから。心理学のプロに助言してほしい人に本書はおすすめ。
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