本の要約サイトを眺めるのは、時間の無駄です。
もしそのサイトが有料会員限定なら、くわえてお金も無駄になります。
時間とお金を失った代わりに得られるのは「わかったような気分」だけで、これはなんの役にも立ちません。
そもそも私たちが有料の要約サイトで行っているのは、カネを使った速読です。
かつてブームになった"速読術"には人間離れしたスキルが必要で、たいていの人は習得できずに挫折しました。
それにたいして本の要約サイトは、登録してカネを払うだけで、誰でも速読ができます。
とはいえ、10分を捨てて1冊の本を「わかったつもり」になったところで、何の意味があるのでしょうか。
生涯で読んだ本の冊数ギネス記録でも樹立したいのでしょうか。
この記事では、
- 1冊10分で理解できるのは駄本だけ
- 要約サイトはお掃除ロボットとおなじ
など、「本の要約サイトがどれだけ無意味なのか」をわかりやすく解説します。
ニセの充実感に騙されないよう、ぜひ参考にしてみてください。
さらば本の要約サイト
「本は1冊につき10分あれば理解できる」
これは妄想です。
10倍速で再生しても映画を楽しめると思っているようなもので、傲慢な思い込みにすぎません。
まず大前提として、1冊の書籍を10分で知り尽くすのは不可能です。
10分という"大便に要するような時間"でできるのは、せいぜい大便くらいでしょう。
要約できる本はすべて駄本
要約サイトには、書籍(たいていビジネス書)それぞれの要点がまとめられています。
ところで、ライターが拾い上げた"要点"の他に、その本には何が書かれていたのでしょうか。
重要なアドバイスは全体の1割に過ぎず、残り9割は、ページ数を稼ぐための冗長でナンセンスな文章だったのでしょうか。
もしそうだとしたら、そんな薄っぺらい本には読む価値がありません。
読む価値がないので、たとえ10分でさえくれてやる必要はありません。
なぜなら、「どーでもいいこと」が内容の9割を占めている駄本だからです。
それにたいして、読む価値のある本には無駄な文章がありません。
ちょうど、すべてのエクステリアデザインに意味があるマクラーレン(スーパーカー)みたいなものです。
ほんとうに有意義な本というのは、書かれているすべての語句が重要です。
洗練されていて、削ぎ落とす箇所はありません。
まるで豪華なビュッフェみたくすべてが素晴らしいため、内容の9割を捨てて、1割を選ぶのは不可能です。
だからこそ、あっさり要約できてしまう"中身スカスカのインチキシュークリームみたいなビジネス書"ではなく、ソーセージのように中身が詰まった良書を手に取り、通読するべきだといえます。
ほんとうに価値のある本は、10分間では理解できません。
要約サイトを眺めても、せいぜい"わかったような気"になれるだけです。
金儲けのカモにされる
大学教授など、権威のある人物が本を要約しているサイトは、閲覧するのにお金がかかります。
要約記事を読みたければ、サイトの有料会員にならなければなりません。
これは、
- ラクしてお金儲けがしたい
- 効率よく最短で成功したい
といった、たいていの人が持つ欲求につけ込んだビジネスです。
本を読むのは面倒だからエッセンスだけ知りたい、そんなわれわれのワガママに、要約サイトは応えてくれます。
ちょうど、掃除するのが億劫だといって掃除ロボットを買い、食器洗いは時間のムダだといって食洗機を導入するようなものです。
つまり、本を読む行為すら放り出している、ということです。
ただし、家事を省略するのと読書を省略するのとでは、わけが違います。
というのも、「こういう内容だった」と誰かが記した要約文は、的外れな可能性があるからです。
たとえるなら、映画の予告編を作るとき、担当者によって「採用するシーン」が異なるようなものです。
重要だとか重要でないだとかの判断はそれぞれの解釈でしかないため、要約サイトの内容が唯一絶対とはいえません。
その本の要約担当者が変われば、サイトに記される内容はガラッと変わるはずです。
私たちは年齢も職業も、年収も悩みも異なっています。
だから自分で本を読み、「なるほど」と感心した箇所が、自分にとって重要な箇所です。
そこが要約サイトに載っている保証はありません。
私たちが感心するはずだった箇所は、削られているかもしれません。
なぜなら要約文を書いているのは、私たちではない「誰か」だからです。
新刊に目を通す必要はない
本の要約サイトを利用しているのは、たいていビジネスパーソンです。
次々と出版されるビジネス書や話題の本について知っておかなければならない、という強迫観念にとらわれているビジネスパーソンです。
とはいえ、新刊すべてに目を通すのは不可能ですし、そうする必要はありません。
続々と出版されるビジネス書のチェックに励むのは、たとえるなら、回転寿司で流れてくる皿をすべて取ろうと奮闘しているようなものです。
周りから見たら「あの人は何がしたいの?」という話です。
そもそも、新刊のなかで読む価値がある本は、ほんの一握りしかありません。
くだらない書籍1冊に10分、6冊に計60分を費やして要点をつまみ食いするくらいなら、マトモな本に60分を集中して使ったほうがマシです。
まとめ
本の要約サイトが私たちにもたらすのは、快感だけです。
「最小限の時間とお金をつかって効率よく知識を吸収し、成長できている。成功に近づけている。おれ/わたしって立派」
こんな気持ち良さ、自惚れ、清々しさを手にしても、どうにもなりません。
空っぽの満足感を求めて毎月2,000円の会費を払い、くだらない本に10分を費やしてわかった気になり、悦に入りたいと思うでしょうか。
読んだ(と認識している)本の冊数をSNSで誇りたいでしょうか。
もちろんそうではなく、価値ある本だけを選びとり、自分の目と頭をつかって理解することを望むはずです。
以上、本の要約サイトはどれだけ無意味なのか、でした。
【結論】世の中の恋愛小説を要約したら、出逢って恋して別れた、ほとんどこうなる。「出会って恋して別れた話だよ」と教えてもらって、「なるほどそういう本か」と納得する人はいない。でもこれがビジネス書になると、やたらみんな納得する。わかった気になる。要約を見て気になった本は、せめて自腹で買って通読したいところ。
「どんな本をどうやって読むのが賢いのか」
ショウペンハウエルの考えが参考になるかもしれません。
彼は「本ばっかり読んでいると思考力が落ちるぞ。とくにほら、暇さえあれば本を読んでいるそこの君」と警告しています。
Amazonでは、こちらの本が高く評価されています。
一言でいうなら、つまらない本を読んで人生を空費したくない賢者用のガイドブック、です。
インスタントラーメンみたいなお手軽本は載っていません。
読書習慣と賢さの関係について、当サイトにはこんな記事があります。
読みかけの本を増やさない工夫に関して、当サイトにはこんな記事があります。