難発性吃音症(ブロック)というのは、声を出そうとしているのに、つっかかって発声できない症状をいいます。
私は大人になってから難発性吃音になりました。
ときどき、まるで喉を塞がれているかのように声が出なくなることがあります。
とりわけ発音しにくいのは、「か」と「た」から始まる単語です。
おなじ難発性吃音の方でも、人によって言いにくい言葉は異なるようです。
どういうわけか私は、「か」と「た」が言いにくくなってしまいました。
たこ焼き、カルビ、たらこスパゲティ、かにクリームコロッケとはお別れ。注文できないから。
この記事では、「難発性吃音症の私が言いにくい言葉」について書きました。
おなじ悩みを抱える方に読んでいただければ幸いです。
難発性吃音症の私が言いにくい言葉
難発性吃音は辛いものです。
「お疲れさまでした」といって職場を後にしたいのですが、「お」がいえないことがあります。
仕方がないので、無言で退社します。
「あの有名人はなんて名前だったかな」と考えている人がいます。
私は名前が浮かんでいますが、吃音の症状が出ることを恐れて、発言を控えます。
これらは日常茶飯事で、とりわけひどいのが「か」と「た」です。
「か」もしくは「た」から始まる単語は、高確率で引っかかってしまい、発音できません。
ゆえに、強い苦手意識を抱いています。
カレー屋の店員に舌打ちされる
「か」がいえないことで招いた悲劇として、2018年東京カレー屋事件というのがあります。
食事をするため、東京の某カレーチェーンに入ったときのことです。
入り口でオーダーした際、店員から「中辛か辛口、どっちにしますか?」と聞かれました。
辛口が食べたかったので店員に伝えようとしますが、「か」から始まる「からくち」が言えません。
喉をロックされたような感覚です。
数秒もがいた後に辛口をあきらめ、中辛をオーダーしました。
私は「辛口って言えなかったなぁ。ふがいないなぁ」と落ち込みます。
ところが、です。
心のなかで「辛口」とブツブツ唱えているうちに、なんだか言えそうな気がしてきました。
「今なら辛口をオーダーできるかもしれない」と思い、店員に「やっぱり辛口にできますか?」と伝えました。
10〜20秒ほどしか経っていませんでしたが、さすがは"即出来上がる"がウリの店、厨房ではすでに中辛のカレーが盛り付けられていたのです。
店員に舌打ちされ、厨房スタッフには呆れ顔をされ、やれやれといった感じで作り直しになりました。
これではただの「優柔不断な迷惑客」です。
迷惑だったことは否定しませんが、優柔不断なわけではないことは、わかって欲しいと思いました。
「か」と「た」が言いにくい苦悩
私はかつて会社で電話担当をしていました。
ですが、「か」と「た」が苦手でいえません。
そこで、「か」と「た」から始まる苗字の社員は、社内に存在しないと思うことにしました。
電話で先方から「田嶋さんいますか?」と聞かれたら、いったん保留にし、内線で確認した風を装って「すみません。席を外しているようです」と伝えます。
つまり、ウソをつくわけです。
相手はあきらめて電話を切りますが、しばらくすると再びかかってきます。
電話担当は複数名いて、運悪く私が受話器をとってしまった際には、「田嶋さん」はまた社内にいない設定になります。
同様のことは「柏木さん」にもいえますし、「金森さん」にもいえますし、「田口さん」にもいえます。
良心がズキズキと痛みました。
そして、難発性吃音を恨みました。
上司に相談し、電話担当からは外れた。
まとめ
これらのエピソードを書いたのは、おなじ悩みを抱えている方が求めていると考えたからです。
「吃音 た 言えない」と検索したことがあります。
おなじ症状の人を探そうと思ったのですが、ネットでいくら調べても出てきませんでした。
難発性吃音に悩んでいるのは世界で自分だけなのではないか、という絶望感に襲われました。
そこで書いたのが、この記事です。
「か」と「た」を克服する方法はお伝えできませんでしたが、電話対応をやり過ごすテクニックならご紹介できました。
電話をしてきた相手は困るでしょうが、こちらも困っているので、痛み分けです。
あなたとおなじような症状で困っている男がここにいます。
難発性吃音は厄介ですが、治療法が見つかっていないようなので、お互いにうまく共存していきましょう。
以上、難発性吃音症の私が言いにくい言葉でした。
結論。かかかかか。たたたたた。文章を書くのは気持ちが良い。文字の世界だけは、吃音でも平等だから。カタカタカタ。
吃音を発症したときのことはこちらの記事に書きました。
興味と時間があればぜひ読んでみてください。