電気自動車が素晴らしいのは、その加速性能です。
エンジンで走る一般的なクルマにくらべて、モーターで走る電気自動車の加速力は、桁違いです。
たとえるなら、指先だけ温泉に入れる気持ち良さと、温泉に全身浸かる気持ち良さくらい次元がちがいます。
というのも、車の原動力として最適なのが「モーター」だからです。
この記事では、
- トルクの違い
- アクセルレスポンスの違い
など、「電気自動車(EV)の加速はなぜ気持ち良いのか」をわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
電気自動車(EV)の加速はなぜ気持ち良いのか
「電気自動車を試乗してからポルシェ911に乗ったら、ポルシェが古臭く感じられた」
これは、とあるモータージャーナリストが雑誌で述べていたコメントです。
ポルシェ911といえば、世界トップクラスのスポーツカーです。
そんなポルシェ911を「古臭く」感じさせたのは、スポーツカータイプの電気自動車ではなく、一般的なEVでした。
つまり、それだけ電気自動車の走りは異次元だ、ということです。
モーターのほうが優秀
事実、クルマの動力源としては、エンジンよりもモーターのほうが優れています。
なぜなら、エンジンよりもモーターのほうが、
- 効率
- 始動性
- レスポンス
において優秀だからです。
たとえるなら、馬車と自動車のようなものです。
かつては人やモノを乗せた車輪つきの箱を、馬が引いていました。
やがて内燃機関(エンジン)が開発され、馬車馬はお役御免となります。
なぜなら、人やモノが乗った箱を「馬」が動かすよりも、「エンジン」が動かしたほうが効率的かつスムーズだからです。
エンジンとモーターの関係もおなじです。
かつての「馬」とおなじ立場であるエンジンは、モーターに勝てません。
すなわち、世代交代です。
最大トルクを発生するポイント
エンジンに最大トルク(加速力)を発生させるには、回転数を上げなければなりません。
回転数がゼロのとき、エンジンのトルクはゼロです。
いっぽうでモーターはというと、回転数がゼロのときに最大トルクを発生させることができます。
つまり、私たちがアクセルペダルを踏みこんだ瞬間、電気自動車は最大トルクを生み出して加速していく、ということです。
人間でたとえるなら、朝目が覚めた瞬間から全力で走れるようなものだといえます。
ゆえにEVの加速は信じられないほどスムーズです。
そのへんを走っているスポーツカーとくらべても、EV(たとえば日産リーフなど) のほうがグングン加速していきます。
先述のモータージャーナリストのように、電気自動車を運転してからガソリン車を運転すると、「ガソリン車はなんて遅いんだ」とガッカリすることでしょう。
まるで、モデルの画像を見てから鏡で自分を見て「なんてスタイルが悪いんだ」と落胆するようなものです。
エンジンはトルクレンジが狭い
モーターにくらべてエンジンが劣るのは、トルクレンジの狭さです。
エンジンはトルクレンジが狭いため、トランスミッションがなければ使い物になりません。
ちょうど、リモコンがなければエアコンを使えないようなものです。
つまり、エンジンとトランスミッションはセットだ、ということです。
そこで変速ギアとトルクコンバータを使い、3段〜10段(ふつうは6段)変速によって、エンジンのトルクレンジを拡大しています。
ずっとギアを1速に入れたまま車を走らせるわけにはいきません。
スピードに乗ってきたら、2速、3速とギアを変えていきます(ATは自動で、MTは手動で)。
でなければ車は、じゅうぶんなスピードが出せないからです。
いっぽうで、モーターに変速ギアは必要ありません。
たとえるなら、エアコンにはリモコンが必須でも、扇風機にはリモコンが必要ないのとおなじです。
電気自動車には減速ギアがついている。
アクセルレスポンスの差
電気自動車は、アクレスレスポンスにも優れています。
EVのモーターに電圧をかけると、一瞬で電流が流れます。
タイムラグはほとんどありません。
ところがエンジンの場合には、まずアクセルペダルを踏むとスロットル弁が開き、吸気量が増えます。
増えた吸気量をセンサーが検知し、必要燃料を計算し、吸気ポートにガソリンを噴射して……といったさまざまなステップを経て、ようやくトルクを発生します。
ゆえに、ガソリン車のトルク応答は、電気自動車にくらべて遅くならざるをえません。
イメージとしては友人に、
- 手紙でメッセージを届ける
- LINEでメッセージを送信する
これらにかかる時間の差のようなものです。
もちろん、電気自動車が後者です。
まとめ
電気自動車(EV)の加速がなぜ気持ち良いのかをお伝えしてきました。
一言でいえば、車の動力源としてエンジンよりもモーターのほうが優れているから、です。
近所をジョギングするときの格好として、宇宙服よりもジャージのほうが適しているのとおなじです。
あるいは寝床として、砂利の上よりも、ベッドの上のほうが快適なのといっしょです。
自動車という鉄のかたまりを移動させるには、エンジン(内燃機関)よりもモーターのほうが適しています。
「百聞は一見にしかず 」というように、実際に電気自動車を運転してみれば、その素晴らしさは一瞬で理解できることでしょう。
- 日産リーフ
- ホンダe
- ポルシェタイカン
- メルセデスEQC
など、世の中にはさまざまなEVが存在しています。
ディーラーへ行けば無料で電気自動車を試乗させてもらえるため、一度ディーラーへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
電気自動車がもつ加速力の気持ち良さを知らないのは、損です。
プライベートジェットがもつ快適さを知る必要はありませんが(99.9%の人間には無縁なので)、EVは誰もが購入できる価格の製品ですので、その動力性能を体感してみるのも悪くありません。
以上、電気自動車(EV)の加速はなぜ気持ち良いのか、でした。
結論。土鍋を火にかけて白米を炊くよりも、炊飯器で白米を炊いたほうが早い。車もおなじで、ガソリンを燃焼させて走るよりも、モーターに電圧をかけて走ったほうが速い。スマホも電子レンジも冷蔵庫も、私たちは電気で動かしている。じゃあ、車はどうする?
【参考文献】
廣田幸嗣『トコトンやさしい 電気自動車の本 第2版』日刊工業新聞車、2016年
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