腹筋運動をして腸に刺激を与えれば、便秘の解消につながるのでしょうか。
答えは、イエスとノーの両方です。
どうしてかというと、ひとことで「便秘」といっても、その種類はさまざまだからです。
たとえるなら、キャベツやトマト、大根、じゃがいも、ブロッコリー、玉ねぎ、レンコンなどがすべて「野菜」であるようなものだといえます。
便秘にもいろいろなタイプがあります。
もし、腹筋の力が衰えて生じるタイプの便秘であれば、原因が「筋力の低下」なので、筋トレによって改善できます。
そうではなく、食物繊維が不足しているせいで便秘になっているとしたら、いくら筋トレをしても意味がありません。
まるで足の爪を切りながら「虫歯〜治れ〜」と念じているようなもので、やっていることが的外れだからです。
そこでこの記事では、
- さまざまな便秘のタイプ
- 筋トレで改善するのはどの便秘?
- 腹筋が関係ない場合はどうすれば良い?
など、「筋トレすれば便秘を解消できるのか」をわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
筋トレをすれば便秘を解消できる?
まず、便秘のバリエーションをご紹介します。
- 食事性便秘
- 直腸性便秘
- 弛緩性便秘
- けいれん性便秘
- 器質性便秘
便秘はこのように細かく分類でき、どのタイプの「便秘」なのかによって、対処法は変わってきます。
大腸がんやアルツハイマー病とちがって、便秘は病気ではありません。
ゆえに便秘なのかどうかを判断する万国共通の基準もありません。
ただし、一般的には「排便が週に2回以下」であれば、便秘だといえます。
3〜4日に1回、またはそれ以下の排便回数だったら便秘だ、とも言い換えられます。
腹筋運動が効くのは弛緩性便秘
さまざまなタイプの便秘のうち、筋トレによって改善が見込めるのは、弛緩性便秘です。
弛緩性便秘というのは、腹筋の力が衰え、排便時にじゅうぶんな腹圧がかからないことで生じる便秘です。
早い話が、大腸から大便をひねり出すだけのパワーが足りない、ということです。
ただし、排便に支障をきたすほど筋力が落ちるのは、
- 高齢者
- 出産後の女性
いずれかがほとんどだとされています。
ですので、どちらにも該当していないのであれば(たとえば女子高校生や中年男性なら)、腹筋を鍛えたとしても便は出ません。
ただ腹筋が6つに割れるだけです。
まして、「筋トレが便秘解消に効くらしい」といって、腕立て伏せをしたり、3kgのダンベルを上下させたりしても、腹筋と関係ないのでなんら効果は得られません。
ただ腕がゴツくなるだけです。
便秘を解消するにはどうすれば良い?
筋トレに励んだとして、たいていの人は便秘が改善されないまま、ただ体がムキムキになっていきます。
どうしてかといえば、便秘になっている原因が、筋肉ではない他のところにあるからです。
原因としてイチバンに考えられるのは、食物繊維の不足です。
ふだんの生活で、食物繊維を意識して摂っていますか?
食物繊維を摂る
食物繊維というのは、私たちの体内で消化できない成分のことをいいます。
たとえば、ガラスのビー玉をうっかり飲みこんでしまった場合、数日経ってからビー玉は、大便といっしょにコロンと排泄されます。
ビー玉が体内で消化され、吸収され、われわれの栄養となることはありません。
食物繊維もおなじです。
摂っても栄養にはならず、そのまま便として排泄されます。
ただし、体内で水分を吸って膨らみ、便の量を増やし、腸を刺激することで、食物繊維は排便をうながしてくれるのです。
食物繊維には、
- 水溶性
- 不溶性
これら2タイプがあって、便秘解消に効くのは、不溶性(水に溶けない性質)の食物繊維です。
不溶性食物繊維を多く含む食べ物は、
- さつまいも
- かぼちゃ
- ごぼう
- 納豆
- 干し柿
- キウイフルーツ
などが挙げられます。
もっと大きなカテゴリーで括ると、
- 穀類
- 野菜
- 豆類
- 海藻類
このようなジャンルの食材に、不溶性食物繊維は多く含まれています。
便秘の解消だけでなく、肥満予防、腸内環境の改善といったメリットがある(つまり健康に良い)不溶性食物繊維は、毎食なるべく摂りたいところです。
水分をとる
便秘を解消するためには、水分補給も有効です。
どうしてかというと、水分が足りていないと便がかたくなり、出にくくなるからです。
たとえるなら、ガチガチに固まったハチミツが、なかなか容器から出ないようなものだといえます。
それにたいして、水分をたっぷり含んで柔らかいほど、便は腸のなかをスイスイとスムーズに移動できます。
水分不足で便がカチコチにならないよう、マイボトルを持ち歩き、こまめに水分補給をしてみてください。
便秘が改善されるかもしれません。
飲むのは水でもお茶でも構いませんが、カフェインは避けておくのが無難です。
というのも、カフェインは利尿作用をもっており、私たちの水分不足に拍車をかけてしまう恐れがあるからです。
便秘解消のためには
- 水
- 麦茶
- そば茶
- ジャスミン茶
- ルイボスティー
このようなノンカフェインの飲み物を選ぶのが好ましいといえます。
もしコーヒーがお好きなら、デカフェのコーヒー(カフェインを除去したもの・カフェインレス)がおすすめです。
まとめ
筋トレが便秘解消に役立つのかどうかをお伝えしてきました。
弛緩性便秘には有効ですが、ほかのタイプの便秘であれば、筋トレをしても排便にはつながりません。
ただし、腹筋が割れたり、腕が太くなったり、太ももがパンパンになったりはします。
弛緩性便秘はおもに、
- 高齢者
- 出産後の女性
といった「腹筋の力が衰えがちな人」に生じやすい便秘です。
もし高齢者でなく、出産後の女性でもないとしたら、筋トレではない別の方法で便秘を改善しましょう。
まず試みるのは、
- 不溶性食物繊維
- 水分
これらの摂取です。
他のアプローチとしては、
- 歩く
- ストレッチをする
- 腹部をマッサージする
- 主食を小麦から米に変える
- 便意がなくても毎朝トイレに座る
- 朝起きてすぐコップ1杯の冷水を飲む
このような手段が挙げられます。
ただし優先順位は、「食物繊維と水分の摂取」が上位です。
もし余力があれば、プラスアルファで上のような改善方法も試してみてください。
ちなみに、不溶性食物繊維をラクに摂れる食べ物は、アーモンドです。
おやつとして、アーモンドをぽりぽりと食べてみてください。
もし便秘が解消しなかったとしても、
- 美肌効果
- アンチエイジング効果
アーモンドが持つこのようなメリットを享受できます(ビタミンEが豊富で、奇跡のナッツ、天然の抗酸化サプリメントと呼ばれている)。
ごぼうやカボチャと違って調理する手間がかかりません。
気軽に食べられるのがアーモンドの特徴です。
どうせ便秘を解消するなら、美肌やアンチエイジングを含めて一石三鳥を狙っていきましょう。
もちろん、便秘薬を飲むのも効果的です(ただ、便秘薬の成分は食物繊維)。
以上、筋トレすれば便秘を解消できるのか、でした。
結論。高齢者・出産後の女性なら、筋力不足が便秘の原因かもしれない。どちらにも該当しない人が筋トレをして腹筋を鍛えても、パカッと6つに割れるだけ。それよりアーモンドを1日20〜30粒食べて、水を飲もう。
ネット通販サイトAmazonでは、こちらのアーモンドがよく売れています。
スーパーやコンビニよりも安い価格でまとめて買える点が魅力です。
【参考文献】
『家庭の医学 ハンディ版』主婦の友社、2020年
曽根博仁『すべての診療科で役立つ 栄養学と食事・栄養療法』羊土社、2018年
足立香代子『決定版 栄養学の基本がまるごとわかる辞典』西東社、2015年
『Newton別冊 健康の科学知識』ニュートンプレス、2020年
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