2021年6月、ホンダのフィットに新たなグレード「モデューロX」が追加されました。
ガソリン車の仕様はなく、モデューロXはハイブリッドのみの販売となっています。
フィット全グレードのなかでもっとも車両価格が高いモデューロXは、ほかのモデルと具体的にどう違っているのでしょう。
たとえば、馬力やトルクがアップしていたり、ボディ剛性が強化されていたりするなど、走行性能が高められているのでしょうか。
標準のスイフトにたいするスイフトスポーツのように、モデューロXは、「もっとも速くてスポーティなフィット」なのでしょうか。
なお、2022年9月をもってフィットモデューロXは生産終了しました。
2022年10月からは、新たにフィットRSがグレードに追加されています。
この記事では、
- エンジン性能は標準車とおなじ
- ドレスアップしたただのフィット
など、「フィットモデューロXが評価イマイチである理由」をわかりやすく解説します。
ほかのグレードとの違いを把握するため、ぜひ参考にしてみてください。
フィットモデューロXが評価イマイチである理由
フィットモデューロXの走りは普通です。
普通とは、標準のフィット(e:HEV BASICなど)と大差ない、ということです。
なぜかというと、モデューロXのエンジン、モーターともに、ほかのフィットe:HEVとまったくおなじだからです。
チューニングして性能を高めているわけではありません。
たとえばスイフトスポーツは、スイフトの「高性能版」です。
GRヤリスは、ヤリスの「高性能版(というよりほぼ別のクルマ)」です。
がしかし、フィットモデューロXは、フィットの高性能版ではありません。
モデューロXの車両価格が高い(286万円)理由は、
- 専用フロントグリル
- 専用フロントエアバンパー
- 専用リアエアロバンパー
- 専用テールゲートスポイラー
- 専用16インチアルミホイール
- 専用フロアカーペット
- 専用コンビシート
- 専用本革巻ステアリングホイール
といった装飾にかかるコストが上乗せされているからです。
標準グレードとの違いは、ほとんどあの見た目だけだといって良いでしょう。
デビルみたいなフロントマスクを気に入った人向けの車、それがフィットモデューロXです。
そもそもモデューロXとは?
モデューロというのは、ホンダの純正アクセサリーを手掛けているホンダアクセス社が展開するパーツブランドです。
モデューロXは、ベース車両とおなじ生産ラインでパーツを装着して作られたコンプリートカーのことを指します。
モデューロはパーツブランドゆえ、走りに関してはほとんどノータッチで、インテリアやエクステリアだけをいじっています。
たとえばSTIはスバルの子会社であり、モータースポーツ活動を行いながら、高性能パーツの開発や販売を行なっています。
だからこそ、モータースポーツで得た知見をそのままコンプリートカーであるSTIへ反映し、よりハイレベルな走りを実現できています。
値段が高くてもSTIグレードを買う意義はあるといえるでしょう。
レクサスのFやメルセデスのAMG、ルノーのR.S.、日産のNISMO、トヨタのGRあたりもおなじです。
が、モデューロXはモータースポーツと深い関わりがありません。
したがってモデューロXを上のAMGやNISMOような「特別モデル」と混同しないようご注意ください。
GRやSTIが筋肉増強剤を注射してパワーアップしているとするなら、モデューロXは、腹筋がバキバキに割れているように見える特殊メイクを施しているだけです。
それらしい出来そうな見た目をしていますが、なんちゃっての見かけ倒しに過ぎず、性能は標準グレードとなんら変わりません。
運転本来の楽しさをあなたに?
フィットモデューロXの専用特別サイトには、「運転本来の楽しさをあなたに。」とのコピーが記されています。
が、お伝えした通り動力性能は、ほとんど標準のフィットのそれです。
醤油ラーメンと醤油ラーメン大盛みたいなもので、見た目は違いますが、味は変わりません。
それとも、ちょっとエアロパーツをくっつけただけで「運転本来の楽しさ」が得られるのでしょうか。
あるいは、モデューロXではないフィットの素性(重量配分やサスペンションやブレーキ)がよほど素晴らしいのでしょうか。
フィットモデューロXは、運転の楽しさを高く評価されているMAZDAロードスターにも負けていないのでしょうか。
そもそも、
- 運転の楽しさ
- 運転本来の楽しさ
この違いからして不明です(ぼかした表現。運転が楽しいとは言い切れないらしい)。
ほんとうに運転が好きなユーザーは、インテリアやエクステリアを変えたただのフィットe:HEVを選んだりしません。
なぜなら、スイフトスポーツでも、GR86でも、ロードスターでも、運転が楽しいクルマはほかにいくらでもあるからです。
フィットモデューロXの評価が低い理由はここにあります。
誰のために作られた車なのかが不明瞭な点です。
エンジン性能の向上なし、トランスミッションはCVTのみでMTの設定はなし、これといったプラットフォームの変更なし、でも見た目だけはスポーティに仕立てました……これでは「速そうに見えてじつはちっとも速くない自動車が欲しい」風変わりなユーザーにしか売れません。
- e:HEV:BASIC
- e:HEV:HOME
- e:HEV:NESS
- e:HEV:LUXE
- e:HEV:CROSSTAR
この優柔不断なラインナップに、スポーティな見た目の「モデューロX」が加わって全6グレードになったと考えるのが良いでしょう。
普通、家庭、奇抜、豪華、悪路、そしてスポーツ……デザインが違うだけの横並びの展開にしては、モデューロXだけ車両価格が高過ぎます。
見た目が異なるのはBASICもCROSSTARもおなじです。
モデューロXをことさら特別扱いする必要はないでしょう。
現状はまるで、素材や厚みがおなじヨガマットが6色売っていて、そのうち1色だけやたら高いようなものです。
そしてその割高な1色のヨガマットだけ、商品説明に「ヨガ本来の楽しさをあなたに。」と書かれているようなものです。
まとめ
スマートフォンでフィットモデューロXに試乗できる店舗を探している人がいますが、その必要はありません。
なぜなら、ハンドリングや走行性能はほかのフィットe:HEVとおなじだからです。
もし近所のホンダのディーラーにフィットe:HEV HOMEの試乗車しか置いてなければ、それを運転すれば事足ります。
「見た目は違うけどモデューロXもこんな感じか……」という具合です。
エクステリアやインテリアの違いはすべてWebサイトで見れるので、
- ネットで見た目を確認
- いずれかのe:HEVで操作性を確認
これでもうモデューロXを買う準備が整ったことになります。
青いヨガマットが欲しいとしても、色違いの赤いヨガマットを試せば問題ないようなものです。
フィットモデューロXのような中途半端なクルマに乗っていると「ああいう人って何がしたいんだろうね。スポーツカーが好きってわけでもないし、人との被りを嫌う頑固者なのかな。でもあの金額を払うならもっと他に……」と不思議がられる恐れがありますのでご注意ください。
いやモデューロXはホイールが30%軽量化されていてね、ダンパーも専用で、エアロの空力が……と反論するオーナーもいるでしょうが、ほんとうにそんな微細な違いがわかる車好きは、そもそもフィットモデューロXを選びません。
ロードスターかポルシェ911にでも乗っています。
以上、フィットモデューロXが評価イマイチである理由でした。
【結論】GRヤリス、ノートオーラNISMO、スイフトスポーツなどの特別版にくらべてフィットモデューロXは差別化が弱い。見た目が違うだけ。加速性能やブレーキ性能は変わらない。ヤリスをお化粧して"GRヤリス"として売り出すようなもの(でも価格は強気)。モデューロX専用バンパーって素敵な響きだけど、CROSSTARだってあれ専用。ニセの特別感を演出する"専用"のワナにご注意を。
フィットRSの加速性能について、当サイトにはこんな記事があります。
ベース車両となっているフィットに関して、当サイトにはこんな記事があります。
フィットのエクステリアデザインについて、当サイトにはこんな記事があります。
トヨタGRヤリスについて、当サイトにはこんな記事があります。
スイフトスポーツの燃費とガソリン代に関して、当サイトにはこんな記事があります。
ネット通販サイトAmazonでは、スポーツカーに特化したこちらのムック本が売っています。
もし紙媒体が売り切れている場合、Kindle版(電子書籍)もご購入いただけます。