安全性の高さで知られる自動車メーカーといえば、ドイツのメルセデス・ベンツ、スウェーデンのボルボ、それから日本のスバルです。
「安全性の高い輸入車がほしい」となると国産メーカーのスバルは候補から外れ、メルセデス・ベンツとボルボを比較することになります。
では、より安全なのはどちらのメーカーなのでしょうか。
率直にいって、どちらも安全性が高く、そこに明確な優劣はありません(詳細は後述)。
強いていうなら、「メルセデス/ボルボどちらにするか」よりも、「どの車種を選ぶか」のほうが重要だといえるでしょう。
たとえばメルセデス・ベンツの場合、エントリーモデルのAクラスよりも、フラッグシップであるSクラスのほうが安全装備が充実しています。
したがって、メルセデス・ベンツ、ボルボというメーカー単位で考えるのではなく、「どの車種にするか」というミクロの視点でも検討してみてください。
メルセデス・ベンツとボルボ、メーカー間に安全性の優劣はないため、デザインや走りが好きなほうを選べばOKです。
この記事では、
- 衝突安全性の評価
- 予防安全性も欠かせない
- 役立つノウハウは共有される
- 国産メーカーも安全性が高い
など、「メルセデス・ベンツとボルボはどちらのほうが安全性が高いのか」をわかりやすく解説します。
ぜひクルマ選びの参考にしてみてください。
【メルセデス・ベンツとボルボ】安全性が高いのは?
2020年7月、韓国で起きたとある交通事故が話題になりました。
有名人夫婦を乗せた乗用車とトラックが正面衝突し、乗用車の乗員は軽いケガで済んだ(トラック運転手は左足骨折)、というものです。
ちなみに乗用車とは、ボルボXC90でした。
2020年11月にも、徳島県で踏切に立ち往生した乗用車が特急列車と接触する事故が起こっています。
乗用車に乗っていた母親(30)と娘(3)はともに軽症でした。
ちなみに、親子が乗っていた乗用車はボルボCX40です。
ボルボは、実際の交通事故4万件以上、7万人以上の死傷者を現地で調べ、その対策をクルマ作りに反映しています。
だからこそ、上のように交通事故から乗員を守れたのでしょう。
「ではやはりボルボが世界一安全なのでは?」
と思う方がいるかもしれません。
がしかし、同様の"奇跡"はメルセデス・ベンツでも起こっています。
たとえば2012年、アメリカで、人を乗せたメルセデス・ベンツSクラスが崖から約120メートル下へ転落しましたが、乗員は軽症でした(運転手は自力でドアを開けて脱出)。
したがって、ボルボが特別頑丈で、ダントツで安全だ、というわけではありません。
この2メーカーに限らず、阪神高速道路を時速216kmで走っていたポルシェがトラックに追突し、トラック運転手は死亡、ポルシェのドライバーは軽症だった事故も過去に起きています。
結局のところ、最近は自動車メーカー全体の安全性が向上しているため、どのメーカーの車を選んでも安心して乗れることでしょう。
各メーカーの安全性の高さは、公的機関によるテストの結果が証明しています。
NCAP(衝突実験)の結果からわかること
自動車の安全性を知る手がかりになるのが、NCAP(New Car Assessment Program)です。
NCAPとは、審査機関がクルマの衝突実験などを行い、その安全性を私たちユーザーに公開する評価制度のことをいいます。
したがって、NCAPの結果を見れば各メーカーの車の安全性がわかる、とお考えください。
では、メルセデス・ベンツおよびボルボの衝突実験結果はどうだったのでしょうか。
まずボルボは、NCAPの対象車種すべてが最高評価(TSP+)を獲得しました。
"世界一安全な自動車メーカー"の称号は、伊達ではありません。
たいしてメルセデス・ベンツは、、CクラスやEクラス、GLEクラスなどが最高評価を獲得しています(販売するすべてのモデルが実験対象ではない)。
ぜひ検討しているモデルの安全性評価を調べてみてください。
「最高の安全性評価」を獲得したクルマにこだわるなら、メルセデス・ベンツの該当車種にするか、ボルボにするか、です。
ちなみに、NCAPの最高評価(TPS+)は、マツダCX-5やMAZDA3、トヨタカローラやGR86、シエンタ、ホンダシビック、それからスバルの多くの車種も獲得しています。
いずれも、前面や側面からの衝突実験で「安全だ」とお墨付きをもらっているわけです。
したがって、「安全性」を第一に考えるなら輸入車にこだわる必要はありません(もちろんおなじTPS+のなかでも優劣はある)。
高級車ならではの安全装備とは?
ただし、NCAPの調査結果がすべてではないのも事実です。
たとえば、メルセデス・ベンツのヘッドレストには、後方からの追突時に乗員のむち打ちを防ぐ仕組み(追突時にヘッドレストが頭部を押し出す)が採用されています。
テクノロジーを駆使して予防安全性を高めたところで、後ろからの追突事故は避けられません。
万が一後続車に追突されたとき、ヘッドレストに「首を守る仕組み」があるかどうかが怪我の程度に関わることでしょう。
ちなみにボルボは、追突時のむち打ちを軽減する「WHIPS」という独自のシート構造を採用しています。
こうした細かい装備については、各モデルの仕様をご確認ください。
安全装備に迷った場合には、なるべく高級なモデルを選んでおけば間違いありません。
たとえばメルセデス・ベンツの最高級モデルSクラスには、「レーダーによりほかのクルマが車両側面に衝突すると判断したとき、衝突する直前にサスペンションが車体を最大80mm持ち上げるシステム」が搭載されています。
これは、車体を持ち上げることで、より強度が高いサイドシルで衝撃を受け止めるためです。
人体でたとえるなら、飛んできたサッカーボールを脇腹に食らうより、硬い腰骨で受けたほうがダメージを抑えられるようなものです。
身も蓋もない話ですが、結局のところ、高級車ほど安全性が高いといえるでしょう(ボディの強度以外にもさまざまな工夫が施されている)。
有益なノウハウは共有される
先ほど「自動車メーカー全体の安全性が向上している」とお伝えしました。
このメーカー全体の安全性向上に貢献しているのが、そう、ボルボです。
というのも、ボルボはこれまでに研究した交通安全に関する知見を公開しているからです。
ゆえにほかの自動車メーカーは、ボルボの研究成果を参考に、自社製品の安全性を高めることができます。
この点から、安全性に関してはボルボが自動車業界を牽引している、といって良いでしょう。
たとえば、いまでは当たり前の「3点式シートベルト」を1959年に初めて開発したのはボルボです。
しかもボルボは、安全な3点式シートベルトの普及を願い、特許を無償で開放しました(自社の儲けよりも安全性を優先)。
それから1994年、世界初のサイドエアバッグを開発したのもボルボです。
2008年に日本で初めて衝突被害軽減ブレーキを実用化したのもボルボです。
これらの技術やノウハウは各メーカーにシェアされているため、ボルボ以外のクルマでも恩恵に与れます。
たとえるなら、「元祖」ではない飲食店の料理でも美味しいようなものです。
ゆえに、ボルボやメルセデス・ベンツにこだわる必要はありません。
なお、もし中古車での購入を考えているなら、なるべく年式が新しいモデルを選ぶことをおすすめします。
なぜなら、予防安全装備のレベルがここ数年で格段に進化しているからです。
結局のところ、安全性の高さで車を選ぶなら「NCAPで高評価を獲得した新しいモデルに限る」といえるでしょう。
それがボルボやメルセデス・ベンツ、ないしほかのメーカーであっても、です。
まとめ
メルセデス・ベンツとボルボ、メーカー規模で安全性を比較するのはナンセンスです。
なぜなら、個々のモデルによって衝突および予防安全性は異なるからです。
スーパーでたとえるなら、「西友とイオンどっちが安いか」をくらべるようなものだとお考えください。
商品によって値段が違うように、クルマの安全性もまた、車種によって差があります。
だから一概に「こっちのほうが優れている」とはいえません。
ただし、ブランドイメージで選ぶならボルボがおすすめです。
というのも、多くの人がボルボから「安全性」を連想するのにたいして、メルセデス・ベンツには「お金持ち」や「偉そう」、「怖い」といったイメージを持つ人が少なくないからです。
つまり、メルセデス・ベンツを選ぶと「安全性」以外にも余計なイメージがくっついてくる恐れがある、ということです。
安全性の高さでCクラスを選んだのに、ご近所から"小金を稼いで調子に乗ってるヤツ"や"金持ちマウントを取ってるヤツ"に見られたら良い気はしません。
いずれにせよ、スクーターと戦車を比較するならともかく、メルセデス・ベンツとボルボは安全性において大きな差がないため、
- 車両価格
- デザイン
- 運転感覚
- ブランドイメージ
- ディーラーまでの距離
これらの要素を加味して決めるのが良いでしょう。
実際に安全で、かつ周囲からも「安全性が高いクルマ」だと見られたいなら、名実ともに安全なボルボをおすすめします。
以上、メルセデス・ベンツとボルボはどちらのほうが安全性が高いのか、でした。
【結論】NCAPの評価が証明するとおり、どちらも世界トップクラスの高い安全性を誇る。安全性を追求するなら、メーカーに依らず「最新型の上級モデル」を買うのがおすすめ。ボディの頑丈さはもとより、カメラやレーダーを使った予防安全装備は日進月歩しているから。
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